原材料の価格高騰などで、「100円ショップ」という業態が岐路にある。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「業界首位のダイソーは300円ショップ業態に進出した。しかし、100円と300円ではビジネスモデルが大きく違うため、成功するとは限らない」という――。
■「100円ショップが100円」なのは日本ぐらい
みんなが大好きな100円ショップですが、そのビジネスモデルが岐路に立たされています。原油価格の高騰でプラスチックが値上がりし、円安で中国やマレーシアなどからの仕入れコストも上昇しています。日本全体が値上げラッシュでもう100円で商品を提供するのが限界まで来ているのです。
そもそも世界中を見回しても100円ショップで商品が100円で買えるのは日本ぐらいです。ダイソーの会社案内(2021年)に書かれている海外店舗での価格を今の日本円に換算するとアメリカ(1.5ドル)、中国(10人民元)、香港(12香港ドル)、ブラジル(7.99レアル)と世界中の広い地域でだいたい「200円ショップ」という水準になっています。
均一価格の水準がもっと高い国や都市もあります。タイ(60バーツ)が227円、ドバイ(7ディルハム)が257円、そして日本から見れば一番物価が高い国のひとつであるオーストラリア(2.8豪ドル)では264円という水準です(いずれも8月8日時点)。
■努力に努力を重ねて、いよいよ限界が来ている
日本の消費者は「安くなければ買わない」という特性が強いのです。このため、他の国では200円で売る商品を、日本でだけ100円で売っているというのが100円ショップ業界です。仕入れ先を高コストの中国から安い東南アジアに移したり、中に入っている商品の個数を減らしたり、商品を小さく薄くしてプラスチックの使用量を減らしたり。努力に努力を重ねてきましたが、いよいよ限界が来ているというのが現在の状況です。
100円ショップ業界では業界2位のセリアがそれでも100円均一を維持しています。一方で、首位のダイソーやキャンドゥ、ワッツなどでは200円商品や300円商品を増やしています。そしてその延長線上の戦略として、「100円ショップではない高価格業態」への進出が始まっています。<中略>
■100円ショップが成立する理由
この100円ショップの高価格業態戦略は成功するでしょうか? 高価格業態への進出についてダイソーにとっては実は大きな注意点があります。
みなさんも100円ショップと300円ショップで、それぞれレジに並ぶ行列を眺めてみると面白いと思います。なぜなら明らかな違いに気づかされるからです。100円ショップの顧客のかごの中には商品がたくさん入っているのですが、300円ショップの顧客はかごを持たずひとつかふたつの商品を手に持ってレジに並んでいるのです。
この消費者習慣の違いから100円ショップと300円ショップのビジネスモデルに違いが生まれます。
そもそも100円ショップが成立する理由を整理してみるとこういうことです。まず消費者は100円ショップに頻繁に出かけるのが生活習慣になります。そしてお店ではついついたくさん購入しがちになります。また買いに行く手間を考えたら「迷ったら買う」行動に出るのです。そしてその結果、お店から見れば原価が高いものと安いものが一緒に売れていくことになります。びっくりするほどお得な商品もあるのですが、原価が低い商品も売れるから100円でも利益が出るのです。<中略>
Standard Productsがダイレクトに競合するであろう無印良品も実はここ10年の間にかなりの低価格化が進んでいます。かつて無印良品はシンプルな商品だけれども品質が良く、その分だけ価格も高いという業態でした。しかしそれだとたとえば衣料の分野ではユニクロに押されてしまう。そこで無印良品の衣料は年々改良を重ねて、今ではユニクロと価格比較しても十分な競争力を持つところまで変貌しています。
Standard Productsが扱う生活雑貨群についても無印良品で同等品を眺めるとほぼ1000円以下、主にワンコイン(500円)以内で買えてしまいます。Standard Productsがもし全品300円であればそれでも競争力は出ると思いますが、500円、1000円の商品については正直、無印良品の顧客が手を伸ばすのは厳しいかもしれません。
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