【シリコンバレー=白石武志】米テスラが運転支援機能「FSDベータ版」を搭載した5万3822台の電気自動車(EV)についてリコール(回収・無償修理)を実施することが1日までに明らかになった。一時停止の標識がある交差点の手前で完全停止しないまま横切ることができる設定になっており、米運輸当局から「衝突リスクが高まる」との指摘を受けた。
米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が開示資料で明らかにした。同局によるとFSDベータ版が作動中のテスラ車は周辺に車や歩行者、自転車が検出されないなど一定の条件を満たした場合に、信号ではなく一時停止標識で全方向の車の流れを管理する交差点を低速で通り抜けることができる設定になっていた。
テスラは「オーバー・ジ・エアー(OTA)」と呼ぶ無線を介したソフトウエアの更新によって問題となった設定を無効にするため、リコール対象車の所有者らが車両を修理拠点などに持ち込む必要はない。1月下旬時点でリコールに関連する衝突や死亡事故は確認されていない。
交差点の手前で完全停止せず一時停止標識をすり抜ける運転は米国では「ローリングストップ」と呼ばれる。交通量の少ない交差点では多くのドライバーの間で習慣のようになっているが、交通規則違反で取り締まりの対象となる。
テスラとNHTSAは1月に2度会合を開き、問題となった設定について協議した。テスラ側のコメントは得られていないが、人の運転習慣に倣ったものであり、標識を無視することは問題ないと解釈していたもようだ。設定を無効にするよう求めたNHTSAの判断は、運転支援や自動運転機能において厳密な交通規則が適用されることを示すものだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN01ELS0R00C22A2000000/