https://news.yahoo.co.jp/articles/7ee92c2d0880bab8b3663d7d4ec0b20683beb0d9
大阪市立大学の幸田正典教授らの研究グループは“ホンソメワケベラ”という7センチほどの魚を使って魚の「自己意識」についての研究を行った。ここでの「自己意識」とは鏡像で自己を認識できる能力のこと。
幸田教授らが行った研究方法は魚の喉に寄生虫に似たマークをつけ、目の前に鏡を置くというもので、14匹中、なんとすべての魚が寄生虫のマークを水槽の底でかき消そうとする仕草を見せたという。ホンソメワケベラは自分や他の魚に付いた寄生虫を食べる習性があるため、鏡に映った自分の姿を見て寄生虫が自分の体に付いていることが分かり、それを取ろうとする動作を行ったのではないか…ということだ。加えて、37匹中31匹がマークを取ろうとした動作の後、鏡に戻り寄生虫が取れているかどうか確認した魚もいたという。
これまでの研究では「自己意識」は人間以外にチンパンジーやイルカなど脳の大きい動物にしかないとされてきた。しかし、この研究結果から“魚にも自己意識ある”と証明されたことになる。
【大阪市立大学・幸田教授】
「人間に近い大きな脳を持つ動物が自己意識を持っている、というのが今のところの世界の常識だが、それが覆る可能性がある。魚はみなさんが思っているより“アホ”じゃないんです、きっと」
■魚に自己意識がある!?批判を乗り越え証明
幸田教授いわく、この結果にいたるまでに長い道のりがあったそうだ。実は3年前に幸田教授はサンプル数は4匹で、同じ内容の発表をした。研究結果は多くのメディアにも取り上げられ、世界でも反響があったという。
しかし、チンパンジーを研究する霊長類学者などから「サンプル数が少ない」「魚はマークが痒くて消す動作をしているのではないか」などの批判的な意見が寄せられた。幸田教授はそんな批判にひるむことなく「魚には自己意識が絶対ある」と信じて研究を続けたのだ。
まず、前回のサンプル数を4匹から14匹にまで増やした。そして対照実験も多く行った。例えば、“寄生虫に似たマーク“という意味のあるマークではなく、緑色や青色など意味を持たないマークをつけて実験を行った。すると、マークをかきけす動作をした魚は1匹もいなかったという。これで、「マークが痒いから、こすった」という批判は否定できたこととなる。対照実験を繰り返したことで鏡を見て “自分の体に茶色の寄生虫が付いている”と知り、かき消す動作をしたという説が強固になったのだ。
■豚や犬にも自己意識が!? 幸田教授「人間の常識が変わる日が来る」
この研究が示すことは魚だけにとどまらない。今回の研究では、前回の研究と合わせると18匹中17匹がマークを消そうとする動作をしていて、成功率は約94%。この成功率はチンパンジーの成功率(約40%)よりも高く、幸田教授は「ブッチギリの世界新記録!」と話す。
しかし、幸田教授はこの成功率の高さは“マークの意味”によるものではないか、と考察している。今回の実験では魚が気になると考えられる寄生虫のマークを喉につけた。一方、これまで自己意識があるとされてきたチンパンジーやゾウの研究では無意味なマークをつけて実験していたという。そのため、これらの動物の成功率が低く出た可能性もあるというのだ。
これが本当ならば、今まで無意味なマークで実験し、「自己意識がない」とされてきた動物、例えば猿や豚や犬、猫…そんな動物たちも鏡に映る自分を自分であると認識できているかもしれないのだ。
【大阪市立大学・幸田教授】
「今まで思われている以上に色んな動物が自己意識を持っている可能性がある。私たちは人間が賢いと思っているが、その認識が間違っていることに気づく時代がくるかもしれない。大阪から世界を変えていきます」
私たちは主に顔を見て自分であると認識するが、ホンソメワケベラなど魚はどこを見て自分だと認識しているのか。幸田教授は今後、そのような研究を行っていきたいとしている。この研究は魚だけでなく動物への認識を変える可能性がある。ほんの7センチの小さな魚を用いた研究が世界に大きな影響を与えるかもしれない。
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