兵庫県但馬地域でズワイガニの漁が解禁されて6日で1カ月となった。但馬水産事務所のまとめで、11月の漁獲量は、高価な松葉ガニ(ズワイガニ雄)が前年同期比でほぼ半減。雌のセコガニの漁獲量も同15%減った。新型コロナウイルスワクチンの普及による経済活動の再開などで燃油価格も高騰しており、地元の底引き網漁船40隻は、厳しい状況での操業を強いられている。(金海隆至、末吉佳希)
「なぜだ。松葉ガニが明らかに少ない」
漁解禁から1カ月。同県新温泉町の浜坂漁港から出漁し、山陰沖を移動しながら操業を続ける底引き網漁船「大和丸」船長の西垣優樹さん(38)=同町=が焦りの表情を浮かべる。
この1カ月で但馬の漁船40隻が取った松葉ガニの総量はわずか110トン。過去5年平均に比べ半分近く減った。
浜坂漁港から約130キロ離れた島根県・隠岐諸島周辺の漁場へ向かう漁船からも「カニが取れない」という情報が寄せられる。
山陰沖は今季、カニの分布などを反映した資源評価が下がり、国の総漁獲可能量の割り当てが前季比1割以上減らされていた。漁獲量は減るとみてはいたが、「ここまでとは」。西垣さんは大きな衝撃を受ける。
「海の異変」に加え、燃油価格の高騰が響く。経済活動の再開で燃油の需要が回復し、重油価格は前年同期の1・4倍にまで高騰。燃料費は1カ月で数百万円に上り、値上がり分だけ負担が増えて経営を圧迫する。