「勢いを失っている」そうイギリス国防省が分析したロシア軍。そんな状況の中、ロシア側に新たな勢力が加わった。その勢力こそ“チェチェンの独裁者”と言われるカディロフ首長とその私兵、カディロフツィ・・・拷問や暗殺を繰り返してきた残虐なプーチン大統領の“親衛隊”ともいえる部隊である。
■「KGB出身者も持て余す汚れ仕事を担う集団」
ウクライナでの軍事作戦が続くさなかの今月15日、プーチン大統領の最側近であるパトルシェフ・ロシア安全保障会議書記がチェチェン共和国を訪れた。出迎えたのは、チェチェン共和国のトップ、カディロフ首長だ。果たしてどんな人物か・・・。ロシアの安全保障に詳しい兵頭慎治氏に聞いた。
防衛省防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長
「チェチェン共和国はかつてロシアからの分離独立を求めていて、イスラム系の大統領がいた。これを2度の紛争を経て制圧した。その後ロシア寄りの傀儡政権ができた。それを率いているのがカディロフという人で、行政のトップということで“くび長”首長という肩書。プーチン大統領に絶対の忠誠心を誓っているので大統領は名乗らない。その見返りとしてロシアから得る資金は国家予算の8割。そして、2万人の私兵(=カディロフツィ)を使って力ずくでチェチェンを統治している。イスラム系の分離主義者たちが今もいるわけですから、このカディロフツィたちは、誘拐・拷問・殺害などかなり残忍な行為に及ぶこともある」
さらに、このカディロフ首長とカディロフツィは、チェチェンの統治だけにとどまらず、プーチン大統領のためなら何でもやる集団と考えたほうがいいという。2006年のロシアの元スパイ、リトビネンコ毒殺事件や、チェチェン紛争での人権侵害を告発し、プーチン批判で知られた女性ジャーナリストの銃殺事件など数々の謎の事件でも、カディロフツィの存在が浮上している。今回のウクライナ侵攻においても、ゼレンスキー大統領の暗殺未遂に関与していたといわれる。パトルシェフ・ロシア安全保障会議書記がチェチェンを訪れたことは、ウクライナへの本格参入を示唆していると兵頭氏は言う。
防衛省防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長
「(今回チェチェンに赴いた)パトルシェフは、プーチン大統領が全幅の信頼を寄せる唯一の人物で、ウクライナ侵攻の決定にも深く関与している。このパトルシェフって人は元KBG の“ドン”で、プーチン氏からすれば“師匠”みたいな人物。このパトルシェフを通じてカディロフそしてカディロフツィにプーチン氏の意向が伝わって動いている」
このカディロフツィが今ウクライナに投入されるということは、単に軍の頭数を増やすというより特別な意味を持つと兵頭氏は言う。
防衛省防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長
「これは軍事的作戦だけではなく、ゼレンスキー政権打倒という政治的オペレーションにもかかわってくる。その工作もカディロフツィならやる力がある。(中略)政治的な工作活動も含め手段を問わない人たちなんです。おそらくキエフに投入して、最終的にはゼレンスキー政権を追い込む」
それにしてもパトルシェフ氏が元KBG の“ドン”であるなら、難しい局面では元KGBを使えばいいと思うが、なぜカディロフツィなのだろうか・・・。
防衛省防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長
「旧KGBの工作員も、変死事件や政治工作活動は国内外でやっているんですが、その人たちでも手に負えないようなところを、カディロフツィに委託するのです」
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