その原因を考えてみると、クオリティに問題があるというよりも、「日本人のお金リテラシーが絶望的に低い」というのはあると思っています。お客さんだけでなく、クリエイターも含めてです。お金リテラシーが低い、いまの日本の土壌では、おもしろいものはつくれないんだろうなと思っています。
たとえば、来年1月に上演する「プペル~天明の護美人間」で3万円のSS席というのをつくったんです。かぶりつきで見られる特等席を3万円で売ると、売り上げが確保できて、3000円の席をつくることができて、歌舞伎のハードルをグッと下げることができます。それに対して、どこかの頭の悪いメディアが「プペル歌舞伎は高い!」というニュースを出していました。ミスリードでアクセス数を稼ぐメディアの品の悪さは今に始まった話ではありませんが、お金リテラシーの低い人が、その記事を鵜呑みにしてしまい、「プペル歌舞伎は高い!」という批判を起こしてしまう。<中略>
日本人が新しいことや知らないものを叩いてしまうっていうのはすごくあって。いつもなぜなんだろうと考えるのですが、一つ、島国の性格もあるかもしれません。大陸はウエルカムじゃないですか。「なるほど」と受け入れるところから始まって、咀嚼そしゃくしてから是非ぜひを決める。
――日本人の国民性によってエンタメ業界が苦しくなっていっているということですか?
【西野】それは間違いなくあると思います。
国の支援がなくても、自分たちで予算をつくる選択肢はあったわけですから。
僕は2013年にクラウドファンディングでニューヨークの個展の開催費用を集めていたし、2016年から制作過程を売るオンラインサロンを始めていました。だけど、そのたびに「ネット乞食だ」「詐欺だ」「宗教だ」と言われて炎上していたので、それを見ていたクリエイターさんはなかなか後に続けないですよね。自分は無視できるタイプだから平気ですけど。
★抜粋
https://president.jp/articles/-/52486?page=2