農水省が欧州に日本のブランド農産品を輸出するために推進している地理的表示(GI)保護制度。
愛知県の八丁味噌も登録されたが、発祥の地・岡崎市八帖町(旧八丁村)の味噌会社2社(株式会社まるや八丁味噌、合資会社八丁味噌)がGI制度に参加せず、市外業者43社が参加する愛知県味噌溜醤油工業協同組合(県組合)が登録団体となるという、なんとも奇妙なドーナツ現象が起きている。
岡崎市には八丁味噌協同組合があり、株式会社まるや八丁味噌と合資会社八丁味噌があり、岡崎2社と呼ばれる。2つの味噌蔵の生産方法は豆麹、塩、水と地域の微生物だけを用い、杉の木桶で2夏2冬寝かす。江戸時代からこだわってきた製法だ。
しかし現在、農水省が八丁味噌の生産者団体として認めているのは岡崎2社ではなく、「愛知県味噌溜醤油工業協同組合」(県組合、43社)だ。その結果、岡崎2社は輸出先だったEU加盟国で八丁味噌を使えなくなる見込みで、国内では自社の八丁味噌に地理的表示(GI)保護制度のGIマークをつけることもできなくなった。さらに2026年以後は、八丁味噌というブランドを使用する場合は、「GI認定を受けていない」という表示をつけないと販売できなくなる奇妙な事態に遭遇している。
八丁味噌の認定産地は八帖町ではなく愛知県。地域的に広い。認証された生産方法も、木桶にこだわらずひと夏以上熟成させれば品質基準を満たす。この結果、愛知県では名古屋市、豊田市、半田市のメーカーも「八丁味噌」の名称で商品を発売している。
岡崎2社は300年以上、土地を動かず同じ製法で味噌を造り続けてきた。100年以上同じ木桶を使い、6トンの味噌の上に3トンの重しを使う。味噌蔵にいる菌たちの体系を守るために洗剤は使わず、土壁も落ちた土を足して塗り直す伝統製法。
一方、農水省が認めた八丁味噌のGI基準は熟成は3カ月、加熱処理も認める「ミニマム」基準。ステンレス桶やアルコール使用もある。早く大量生産できる。
県組合の担当者は話す。2社が八丁味噌を独占するのはおかしい。蔵つきの菌といっても、岡崎2社でも菌は違う。県組合と岡崎2社は違うでしょうが、岡崎2社同士でも味覚や成分分析の結果は違う。麹を作るのも自動だし、木桶に入れて石を積むのが伝統製法か、くらいでしょう
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/301074
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