法隆寺五重塔が「地震で全然倒れない」納得の根拠
東京スカイツリーにも導入されたすごい技術
五重塔は全体的にユルユルの構造
法隆寺は奈良県生駒郡にある寺院で、1300年以上昔に造られました。五重塔を含むいくつかの建物は、現存する世界最古の木造建築で、日本で初めて登録された世界遺産です。実は1000年以上昔の木造建築は世界の中でも日本にしかありません。火災をまぬがれた幸運もありますが、世界有数の地震国日本で高い塔が倒壊せずに残ってきたことは驚異的です。
仏教寺院の建築技術は6世紀後半、仏教とともに朝鮮半島から伝わったといわれていますが、五重塔に使われている技術は、朝鮮半島にも中国大陸にもない日本独自のものです。総重量1200トンを、いったいどのような技術で安定化させているのでしょう?
五重塔は、中心に立っている桧(ひのき)の柱(心柱、しんばしら)と周囲にある5層の瓦屋根(庇、ひさし)からできています。塔の重量はほとんどが庇にあります。
しかし実は心柱の周囲は吹き抜けになっていて、階段すらなく、各階の庇とは直接つながっていません。心柱が他の構造と接しているのは屋根の部分だけです。心柱はただ地面から立っているだけで、庇自体の重量を支えているのは心柱とは別の16本の柱なのです。しかも、ある階の庇は下の階の庇に間接的に乗っているだけで、構造は階ごとに独立しています。
つまり法隆寺の五重塔は、実は全体的にユルユルの構造なのです。
さて、各階の庇は上にいくほど、小さく軽くなっていますが、これはデザインのためだけでなく、それ自体が五重塔の地震対策に大事な役割を持っています。
大きな地震が来ると、各階の重量が違うためタイミングがずれて揺れます。自転車と軽自動車とダンプカーが同じ力で加速したら、進む距離が違ってくるようなものです。
その結果、各階は地震のとき、しばしば逆向きに振動し、各階の重心の変化は塔全体としては打ち消しあうことになります。塔が全体として大きく傾かなければ、塔を構成する木がしなって、その揺れを吸収できます。
五重塔を倒すほどの地震は、地球上に存在しない
それでも大きな揺れが来ると、いちばん大きく影響を受けるのはいちばん高い屋根の部分です。実はそこに心柱がつながっていて、大きな揺れを心柱が吸収するのです。
ユルく結合した庇が地上と最上部の心柱の両端で支えられていて、その間の各階が自由に動けるようになっているイメージです。こうして全体の間接的でユルい結合が地震のゆれをうまく吸収し、全体へのダメージとならないように設計されているのです。
地震の規模を示すマグニチュードには上限があります。地殻を作っている岩石の構造が壊れてしまうので、無限に大きなエネルギーは貯められません。1921年、東京帝国大学教授の大森房吉は、いくつかの実験を元に「五重塔を倒すほどの地震は(地球上に)存在しない」と結論づけています。
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