<「卵を産む哺乳類」ハリモグラの「絶滅種」が、実は生存していたことを英オックスフォード大学が率いる研究チームが発見>
英オックスフォード大学が率いる研究チームが、ニューギニア島への遠征で大きな成果を発表した。「アッテンボローミユビハリモグラ」の存在を証明する動画の撮影に初めて成功したのだ。英語で「エキドナ」と呼ばれるハリモグラだが、今回発見された種類はこれまで60年前の死骸の標本しか確認されておらず、絶滅したものと考えられていた。
【動画】60年前に絶滅したはずが…奇妙な生物「エキドナ」の生きた姿を、初の撮影成功
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/11/post-103074_1.php
BBCによれば、イギリスの著名な自然史ドキュメンタリー制作者で動物・植物学者のデービッド・アッテンボローの名前を冠したこのハリモグラは、その存在を証明する証拠が「オランダの博物館に収蔵されている何十年も前の死骸の標本」しかなく、既に絶滅していると考えられていた。
ハリモグラは哺乳類でありながら卵を産む珍しい生き物。英語名の「エキドナ」は、ギリシャ神話に登場する「上半身は美女で下半身は蛇」の姿をした怪物の名前が由来だが、哺乳類と爬虫類の両方の特徴を持つ生態からその名が付けられた。
今夏にインドネシア・ニューギニア島のサイクロプス山脈を訪れた遠征隊のリーダーを務めた、同大学のジェームズ・ケンプトン博士は、
「我々は何千もの無脊椎動物のサンプルと、100近いカエルや爬虫類を採取した」と述べた。また彼によれば、遠征隊は2種の新種のカエルや数十種の新種の昆虫など、ハリモグラ以外にも新たな発見をしていた。
■最後のメモリーカードで撮影に成功
アッテンボローミユビハリモグラの動画は、離れたところからトレイルカメラ(動物の熱を感知して自動で撮影するカメラ)で撮影された。遠征隊のウェブサイトには、「この動画は、この類まれな卵を産む哺乳類が、これまで唯一その存在が確認されているサイクロプス山脈に今も生息していることを証明するものだ。今後このハリモグラとその生息環境を守るために、我々が行動を取っていくことがきわめて重要だ」と記されている。
オックスフォード大学生物学部によれば、遠征隊(研究チーム)は1万1000メートル以上の山道を登り、80台以上のカメラを設置。そのカメラがアッテンボローミユビハリモグラの写真と動画を撮影した。研究チームは遠征最終日、最後のメモリーカードに記録された最後の写真や動画の中にアッテンボローミユビハリモグラが映っているのを発見したという。
オックスフォード大学生物学部は11月10日にX(旧ツイッター)上でもこの発見を発表。「遠征隊はサイクロプス山脈で1万1000メートル近くを登り、ヒルやマラリアと闘いながら、このハリモグラの初めての写真や動画を撮影することに成功した」と投稿した。
■ほかにも新たな属の陸生のヨコエビなど多くの発見が
ケンプトンは、研究チームは今回の遠征で新たな属の陸生のヨコエビという「驚きの発見」もしていたと明かし、「サイクロプス山脈はそれだけ湿気があるのだろう」と述べた。彼によれば、遠征研究の長期的な目標は、サイクロプス山脈の保護を強化する必要があることを示すための証拠固めだと語った。「インドネシアのニューギニア島にある原生林の83%が、まだ人の手が入っていない自然のままの状態だ。我々は、世界で最も生物が多様な島を確実に保護していく上での、きわめて重要な局面にいる」と彼は述べた。ケンプトンはさらに、今後さらに「ニューギニア島全域」に研究範囲を広げることを目指しているとも述べた。
遠征に参加した昆虫学者のレオニダス・ロマノス・ダブラノグルーは、オックスフォード大学のウェブサイトに寄せた記事の中で、次のように述べた。「熱帯雨林は、最も重要かつ最も脅威にさらされている陸上生態系のひとつだ。知識やスキル、装備の共有を通してその前線にいる同僚たちを支えることは、我々の義務である」
https://news.yahoo.co.jp/articles/d74bae4b7ad72aa9276bf4ae3106102167684c72