新しい資本主義を掲げ格差是正を目指す岸田文雄首相の姿勢が、政情不安の香港に代わるアジアの金融ハブをつくる「国際金融都市構想」を進めてきた政府の従来の動きと逆行するとして、市場は警戒感を強めている。
岸田首相は自身の「新しい資本主義」について「市場や競争に全てを委ねるのではなく、市場の失敗や外部不経済を是正する仕組みを成長戦略と分配戦略の両面から資本主義の中に埋め込み、資本主義がもたらす便益を最大化する」と説明している。
そうした信念に基づいて出てきたのが自社株買い制限発言や金融所得課税見直しの公約だ。14日の衆院予算委員会で自社株買い制限の検討を求めた質問に対し岸田首相は「新しい資本主義を実現していくということから考えた時に、ご指摘の点は大変重要なポイント」と答えた。さらに「例えばガイドラインとか、そういったことは考えられないだろうかと思います」と続けた。
自社株買い規制に前向きともとれる発言に市場は敏感に反応し、株価は下落した。岸田首相はその後、公の場で自社株買い制限への考えを明らかにしていない。
「成長と分配の好循環」を掲げる岸田首相は、自民党総裁選の公約に格差是正策として金融所得課税の見直しを掲げた。就任後、株価下落や市場の批判を受けて2022年度税制改正での見直しは見送られたものの、将来的には「分配政策の選択肢の一つ」として残る。
政府はこれまで、国際金融都市構想を掲げ、税制見直しや海外人材を呼び込むための優遇措置に取り組んできた。
ピクテ投信投資顧問の市川眞一シニア・フェローは「構造的に日本は東京を国際金融ハブにすることから遠のいている」と指摘した。岸田政権の新しい資本主義から「人々は日本が新たな成長軌道に乗るという期待を持てていない」と言う。
ハーバード・ビジネススクール日本リサーチ・センター長の佐藤信雄氏は、海外投資家による「株式投資の多くは、アベノミクスを前提としている」ため、アベノミクス以前の状況に逆戻りすることは「明らかに海外投資家を失望させるだろう」と語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-12-23/R3PY51T0G1KW01
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