急速なEV市場拡大は欧州の日本叩きか…携帯電話の規格競争に敗退した時と酷似
現在、自動車業界における注目のキーワードは「EV(Electric Vehicle:電気自動車)」一択といってもよい状況となっており、HV(Hybrid Vehicle:ハイブリッド自動車)は、もはや時代遅れといった感さえ漂う。<中略>
世界各国でEVが急速に普及している要因として、一般に政府の関与が指摘される。具体的には、購入者に対する補助金の支給や免税、メーカーに対するEV販売の義務付けなど、さまざまな施策が行われている。また、米国カリフォルニア州においては、HVはゼロエミッション車の対象外となり、さらにEUによるガソリン車およびHVの販売禁止に関する規制案の検討など、EVへの追い風は今後ますます強まる状況である。
もちろん、温暖化対策が世界全体で取り組むべき重要な課題であることは言うまでもない。しかしながら、欧州諸国を中心に進められる具体策に注目すると、排出権取引や今回のEV推進など、結局、自らの利に適う方策に終始しているように思われる。一方、日本は概ね、こうした方策により、窮地に追い込まれる場合が多い。逆を言えば、こうした大きな仕組みづくりは、日本叩きの欧州のお家芸といえるかもしれない。
筆者はこうしたEVの動向を見ると、2005年ごろに取り組んでいた「日本の携帯電話端末と国際市場」に関する研究を思い出さずにはいられない。
携帯電話の創成期にあたる1985年の国際市場において日本メーカーは、NEC(16%)、沖電気(15%)、パナソニック(10%)、三菱電機(5%)と、50%程度のシェアを保持していた。しかし、2G(第2世代)の通信規格競争において、日本が主導するPDCは欧州主導のGSMに実質的に敗れ、その後、急速に影響力を失い、現在に至っている。もちろん、日本メーカーの事業戦略や国際マーケティング戦略にも問題はあったものの、通信規格競争の敗退が、国際市場におけるシェアの大きな減退の主たる要因となったことは間違いない。
つまり、一企業における商品力やマーケティング力といったポイントではなく、国家レベルでの業界標準など、大きな仕組みづくりに敗れたわけであり、今回のEVも極めて類似した匂いが漂っている。
なぜ日本メーカーはEVで世界の後塵を拝しているのか
同2面の記事「華流EV世界へ」では、中国の地方都市である柳州市におけるEV振興のケースが紹介されている。柳州市では、補助金支給に加え、住民が企業と協力して充電スタンドを建設するモデル事業に力を入れ、結果、市内にある充電スタンドは700カ所以上にもおよび、ガソリンスタンドの190カ所を大きく上回っている。
トヨタ自動車のトップである豊田章男氏は、以前より「カーボンニュートラルの実現にはエネルギー政策の転換が重要」といった主張を展開している。つまり、発電における再生可能エネルギー比率の低い国では、EVの二酸化炭素削減への効果は限定的であるということである。
もちろん、自社が優位に立つHVの存在感を高めようという意図もあるだろうが、筆者は一定の合理性を感じている。しかし、こうした発言は一般には「トヨタはEVに消極的」と捉えられるケースが多いようだ。
さらに深刻な問題は、消費者の購買行動において、必ずしも合理的な意思決定が行われるとは限らないということだ。たとえば、液晶テレビの創成期、画質の美しさといった基本性能や価格の面では、圧倒的に従来のブラウン管テレビのほうが勝っていたにもかかわらず、「箱型はもう古い、これからは薄型だ」といったムードにより、あっという間に液晶に置き換わってしまった。EVにおいても同様な事態が生じる可能性は決して否定できないであろう。
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https://biz-journal.jp/2022/04/post_291250.html
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