多くは生活困窮者…空き缶の無断回収は迷惑!? ルポ・条例で禁止の那覇市、指導激増 21年度862件
金属リサイクル業者に持ち込むと換金できるアルミ缶。各家庭から出る資源化物の無断持ち去りを条例で禁じる沖縄県那覇市で、缶類に限った指導件数が2017年度の97件から21年度は862件と8・9倍に増加している。ただ、アルミ缶収集はコロナ禍や物価高で生活困窮者の生活資金になっている側面もある。市は「過料も科す条例に賛否あるが、一部の持ち去り行為が住民に迷惑をかけているのも事実」と説明する。同市のパトロールに同行した。(社会部・城間陽介、普久原茜)
「4月で日雇いの仕事がなくなったからまた始めた。1日10キロ集めて2千円ちょっとかな」
1日午前7時半過ぎ、那覇市の住宅街。空き缶収集していた男性(63)は、無断持ち去りで同市のパトロール隊から指導を受けていた。
男性に事情を聴いたところ、4月まで日当8千円の土木関係の日雇い労務をしていたが、打ち切りにあったという。一日中、体を酷使する仕事は体力的にも厳しかった。「空き缶収集はまだ自由が利く。8月から年金を受給する。それまで生活費をどうにかしないと。貯金はない」
6月末時点のアルミ缶の買い取り価格は1キロ当たり210~220円。男性は毎週30キロ前後を集める。換金し、その日必要な食料や日用品を買えば手元にはほとんど残らない。生活保護の対象となるはずだが、男性は「受けない」と言った。
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男性のように、資源化物の持ち去りの多くは生活困窮者だ。パトロールする県警OBによると、60~80代の男性がほとんど。8割は生活困窮者、2割程度は「困窮とまでは言えず、小遣い稼ぎ」というケースが多い。
「さっきの軽トラックは悪質な持ち去り。僕らを見て逃げたよ」。パトロールに同行中、隊員が記者に声をかけた。徒歩や自転車ではなく、乗用車を使った持ち去り行為には手を焼いているという。“小遣い稼ぎ”をする人は乗用車を使い、一度に100キロ近く集める人もいるという。
そもそも、人が捨てたごみを「もらう」ことは駄目なのか。市によると、資源化物を含む一般家庭から出るごみは誰にも所有権がない「無主物」。ただ、市の条例では廃棄物の適正処理は市と回収業者、市民それぞれの「責務」。また「資源化(再利用)の徹底」を市の責任とする。市が回収した21年度のアルミ缶の売却代は3900万円だった。これはごみ処理の市の財源となる。
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