1959年に発表されて以来、愛され続ける『アルジャーノンに花束を』。今年は、『第16回オリコン年間“本”ランキング2023』の文庫ランキングで13位を獲得するなど、再びヒットしている。同作は日本で2度のテレビドラマ化のほか、何度も舞台化されているが、これほどまでにブームを繰り返す海外翻訳小説はあっただろうか。世代・時代を超えてここまで愛される理由とは何なのか。早川書房・ミステリマガジン編集長兼書籍編集部課長の清水直樹氏に聞いた。<中略>
「アメリカなどを見ると、映画『DUNE』などのような壮大な作品が再ブームを起こしています。対して、日本は舞台をどこに置き換えても文化的な障壁のない普遍性がある作品が好まれます。言い方は難しいですが、大掛かりなセットや複雑な背景が必要なく、いってしまえば低予算でもメディアミックスしやすいことも日本でヒットしている要因の一つではないかと考えます」
ひらがな、カタカナ、漢字…日本語の持つ特異性が物語の理解に大きく貢献
また、文章表現において、日本語という言語が同作の世界観にマッチしていることも挙げられる。同作は幼児なみの知能を持つチャーリイの報告書といった構成から物語が進んでいくため、冒頭は非常に言葉がたどたどしい。原文でも「write」が「rit」と表記されているなど、あえてスペルミスすることで稚拙なチャーリイのキャラクターが表現されている。
「日本語というのはひらがな、カタカナ、漢字からなる特異な言語。小尾芙佐さんの名訳で、知的障害を持ったチャーリイのたどたどしさを、ひらがなだけで表現しています。そこから、複雑な言語を用いた表現や、カタカナ、漢字など織り交ぜることで、天才に変化していく様子を文章のビジュアルだけで垣間見せていくことができる。そういう意味では、物語と日本語の相性の良さも広く読まれた一つかもしれません」
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