8月に沖縄で開催された男子バスケットボール・ワールドカップの初戦、日本対ドイツ。チケットが完売したにもかかわらず、テレビ中継ではコート付近の観客席に空席が目立ち、多くの疑念が生じた。原因は、スポンサー企業や各国協会に割り当てられた席が利用されなかったことだが、もし大会が欧米で開催されていればデジタルチケットの機能により速やかに再販して空席を埋めたり、テレビに映る席へのアップグレードを低価格席購入者にオファーするなどして、空席を目立たなくする対応が可能だったはずだ。
欧米ではデジタル化が進み、紙チケットの使用は激減した。購入者のスマートフォンに送られるバーコードやQRコードによって会場に入ることが普遍化し、合法的な転売も簡易化された。チケット購入後に万が一行けなくなったときでも他の会員の方へチケットを譲渡できる「二次流通チケット」の販売業者による取り扱い総額は2022年で26億ドル規模となっている。
二次流通チケットの販売は、一次購入者からどのような経緯でチケットが最終利用者に行き着いたかをデジタル化とブロックチェーン技術により追跡できる。チケット購入者は、球団やファンクラブ、会場のアプリケーションを併用することにより、自宅を出てから帰宅するまでの交通機関や駐車場利用、入場指定席への案内、飲食の注文など全てがスマホで完結できることから、一度体験すれば利用を躊躇することはほぼ皆無である。
ところが、国内のスポーツやエンターテイメントのチケット販売制度は、ガラパゴス環境から抜け出すことが出来ずに世界の潮流から取り残されている。そこには、旧来の興行ビジネスに存在するチケット流通の不透明さが大きく関係していると言わざるを得ない。グレイゾーン、曖昧さを敢えて残すことによって興行ビジネス独特の馴合いが可能となり、共存体制が維持されてきたことが要因だと考えられる。
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