「1日1件以上」転落事故が発生
2020年3月に岡山県がまとめた「用水路等転落事故対策ガイドライン」には、2013(平成25)~2016年の消防本部の統計が掲載されている。
これによれば、この期間の用水路への転落による出動件数は1562件だ。年平均では391件となり「1日1件以上」の転落事故が発生している計算だ。
悲惨な事故になる事例も多い。事故に遭った人のうち中等症以上(死亡・重症・中等症)のけがを負ったのは全体の47%にあたる736人、そのうち「108人」は死亡している。
このほか統計によると、年齢別の事故被害者は65歳の高齢者が全体の54%であることや、転落の際に使っていた交通手段は徒歩が53%、自転車が27%となっていることも記されている。毎日のように誰かが転落するゆえに、岡山の用水路は、誰が呼んだか
「殺人用水路」
「人食い用水路」
と呼ばれるようにもなっている。<中略>
しかしここで気になるのが、柵を設置するなどの対策強化が始まってから、「10年にも満たない」ということだ。これまでも長い年月にわたって用水路に転落する人は絶えなかったはずなのに、なぜ放置されてきたのだろうか。
2023年度の予算案で、新たに100か所の追加対策を実施することを決めた岡山市の道路港湾管理課に尋ねると、まず「危険ですが、用水路が“かみつく”わけじゃないですからねぇ」というユーモアのある回答が返ってきた。<中略>
さらに担当者と話しているなかで、岡山出身の筆者は、近年まで問題化されなかった背景に岡山人の“気質”があると感じた。どういうことかといえば「用水路に落ちた」と人に知られるのは「ふうがわるい(みっともない)」のである。
ほかの地域では心配されそうだが、岡山では「あの人は用水路に落ちたんで」と、少なくとも1か月は笑い者にされる可能性は高い。親戚であれば法事で顔を会わす度にいわれそうだ。
だから、岡山では用水路に落ちても多少のけがなら自力ではいあがって、救急車を呼ぶこともなかった。ところが、近年は高齢者の転落が増えたため多少のけがではすまず、救急車を呼ぶことも増えた。このことで問題が可視化され、岡山人も笑い者にしている場合ではないとようやく気づいたわけだ。
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