1:名無しさん


タコ焼き屋台のタコ絵を収集していて一番面白いのは、おそらくこれらが「模倣とアレンジ」によって受け継がれているであろうこと。この2枚の絵は明らかに源流を同一にしながら鉢巻や目の位置の差異からデザインの複製ではなく別人の手による模倣だと考えられる。デジタルのデザインデータを複製しているのではなく描いている。構図にタイプは複数あるし、たまに完全オリジナルっぽいのも発見するが、昭和初期くらいまで遡るとサラブレッドの3大始祖みたいないくつかの原型から派生したことが発覚するのかもしれない。テキ屋文化とも密接に関係してきそう。

 

 

 

もう一つ面白いのが、タコ焼きにおける食材としてのタコは基本的に「ブツ切り」状態で使われるのにもかかわらず、「タコのブツ切り」の絵を掲げている屋台は今のところ発見されていないこと。一方イカ焼きはイカの原型を留めながらも身体に切れ込みが入っているタイプが存在する(これら4枚も源流は同じだと推測される)。つまり「食材」が絵になっている。調理法が姿焼きになると生体と食材の境界が曖昧になっていく現象は実に興味深い。

 

 

屋台のタコやイカに限らず、とんかつ屋の看板にブタのキャラクターが描かれていたり、唐揚げ専門店のマスコットキャラクターがニワトリだったりするのは、よくよく考えてみるとかなりグロテスクな発想だ。とんかつ屋のブタがコックの姿をさせられているパターンすらある。単に食材としての生物の絵ではなく「食材がキャラクター化」されているのは単なる広告手法というだけではなく、人間が他生物の命を食らって生きているという事実に対する原罪意識が根付いているようにすら感じるのである。「お前が食っている”それ”は生きていたのだ」と。そういう意味で、生体と食材の境界がぼやけているイカの絵は、人間の食に対する意識のグラデーションを示す例として面白い。