アメリカ大統領選も近づいてきたので、なじみのない人のために情報を連続投稿でまとめておきます。まず、ルールについて
— 堀 正岳 @ めほり (@mehori) November 4, 2024
大統領選挙は50州のそれぞれが選挙を行うところが特徴的です。それぞれの州の勝者は基本的にその州の選挙人を総取りできる仕組みです #めほり大統領選ウォッチ 1/ pic.twitter.com/9CwbIytxUD
この選挙人たちが結果を連邦政府に持っていって投票することで大統領が決まるという、ちょっと回りくどい仕組みになっているのですが、そこも重要な点です
— 堀 正岳 @ めほり (@mehori) November 4, 2024
選挙人の数は全部で538人。なので270人を獲得すれば勝つことができます 2/
この「州単位で勝者総取り」が大統領選をわかりにくく面白いものにしている点です。先ほどの画像は2016年のクリントン vs トランプの結果ですが、
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・クリントン:6585 万票 48% 選挙人 232
・トランプ:6298万票 45.9% 選挙人 306
と、ヒラリーは得票数が多いのに負けています 3/ pic.twitter.com/drMvVO4QM4
こうしたことが起きるのは、たとえばカリフォルニアなどでいくらヒラリーが圧倒したとしても、僅差で負けたペンシルヴァニア州の選挙人がすべてトランプにいくといった、総取りの仕組みから生まれています
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これが Electoral Collage Bias と呼ばれる潜在的なバイアスです 4/ pic.twitter.com/dlcboeOXs7
ちょっと横道にそれると、ネブラスカ州とメイン州だけは経緯があって選挙人を総取りではなく区に分けているのですが、
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ネブラスカ州はつい先日まで共和党が「やっぱ勝者総取りがよいのでは(本音:トランプの票を1つ増やしたい)」という活動をしていて失敗したところ 5/
では2024年の大統領選挙はどうなっているかというと、ニュースはいろいろ言うのですがバイデンが drop out してハリスに候補者が変わってからは基本的に安定というか、膠着しています
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ハリス氏 +3 くらい優勢だったのがここにきて差が数字上縮小してきた 6/ pic.twitter.com/x7Zq8IcTID
この情勢を知るために利用される世論調査ですが、いろいろな調査会社が全国レベルだったり、州レベルで調査を行っています
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なかには特定の候補が勝っているイメージ作りのために調査をしている怪しいところも 7/ pic.twitter.com/SuoYULJbgp
そしてこの調査自体も、とても多くの仮定や計算で補正しています。たとえば700人を調査をしたとして:
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1. 性別・年齢・人種・教育の分布が正しいか
2. 支持政党の割合が正しいか
をチェックして、必要なら重み付けで補正しないといけませんhttps://t.co/WnFeZaxULd 8/
この補正だけでも +6 ハリスという生の調査結果が +0.9 ハリスに変わってしまうほどで、なかなか困難なことをしているわけです
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しかも今年、多くの調査会社では recall voting という、物議を醸す補正をさらに行っていますhttps://t.co/POyB6gbWzP 9/
これは調査をするときに「あなたは2020年の選挙でどちらに投票しましたか」と質問し、その回答を利用して結果が2020年のトランプ・バイデン比に一致するように補正するというものです
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このおかげで調査結果は2020年に近くなってしまうという効果が生まれています 10/
こうした補正の結果、バイアスがなくなって「正確」な値の周りに結果が分布すると考えられているのですが、補正の際の仮定が外れると大きな誤差を生むとも考えられていて、正直、これは開票結果をみないとわかりません…https://t.co/Tt7y97EvSc 11/
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このようにして得られた一つ一つの世論調査にはそれでも MoE つまり誤差が含まれます。世論調査自体の過去の的中率や信頼度もあります
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それらをすべて重み付け平均して、確率も加味してシミュレーションをすることで確率モデル的な「勝率」を計算できます 12/
たとえば FiveThirtyEight のシミュレーションはいまこんな感じになっていて、トランプ氏が3%有利なコイントスという状態です
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これを「トランプ氏勝利」と読んではいけなくて、あくまで「少し有利なコイントス」なのです 13/ pic.twitter.com/lw1qyYcnSr
ネイト・シルバー氏のモデルも、妙にあやしい行ったり来たりをしてなんだかなあと思うのですが、基本的には僅差という予測を示していますhttps://t.co/1VcvVUBG3H 14/
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ちなみに、よくツイッターで回ってくる「トランプ圧勝」みたいなグラフは Polymarket という賭けサイトの実況であって、世論調査ではありません。だまされないように
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そしてネイト・シルバー氏はいまPolymarketに雇われているという…https://t.co/jysvm6dhmJ 15/
それにしても、なぜこんなに僅差なんだというのにもいろいろな意見があって、NYTのNate Cohn氏は「世論調査会社が大きく外して非難されるリスクを避けるので似たような値に収束している」という、Herding という現象が起きているとコメントをしていたりしますhttps://t.co/5XeKnU7r8J 16/
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そこに投下されたのが昨日のアイオワ州の Ann Saltzer の調査結果で、ハリス +3 という数字に界隈は騒然となりました
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アイオワ州は2020年はトランプ+8の州だったからです。そして Ann Saltzer はアイオワ州で最も信頼できる、たびたび選挙を当ててきた存在だからというのもあります 17/
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トランプ氏支持をしている人がすぐに「いや内部調査ではアイオワはトランプ+5だ」と反応しているのですが、そうだとしてもこれはトランプ氏にとって悲惨な結果になります
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トランプ氏は前回アイオワ+8でも勝てなかったのですからhttps://t.co/Tv7sKLoxWM 19/
「Ann Saltzer の言うとおり、アイオワ州でトランプ支持が低いなら、他の州も動いてハリス圧勝になるのでは」
— 堀 正岳 @ めほり (@mehori) November 4, 2024
「いや、いくらなんでもあれは外れ値だろう」
「でもAnn Saltzerが12ポイントも外すだろうか」
こんな議論が盛んに行われています。楽しいでしょう?笑 20/
もしトランプ氏が勝つなら、それはバイデンの支持率が低いこと、インフレなどへの不満、そしてヒスパニック層などが次第に共和党寄りになった影響が考えられますhttps://t.co/QZtwsKpWAl 21/
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もしハリス氏が勝つなら、純粋にトランプ氏よりも支持率が高いこと、女性票が大きく動いたこと、トランプ氏の牙城である白人票を切り崩したことなどが挙げられます
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でも大局がそうでも、勝負は接戦州での寄せの戦いにかかっていますhttps://t.co/rjPzgTJB0h 22/
では最後に、最新状況を見て終わりにしましょう。いま期日前投票や郵送投票が進んでいますが、関心の高さもあって、そこら中で期日前投票の記録が更新されています
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オハイオ州では期日前投票終了時間になってもこの列https://t.co/DerbrIHEkk 23/
期日前投票では女性の投票も非常に多く、これは人工妊娠中絶に関する Roe vs Wade の先例を棄却した Dobbs 裁判への反応だとみることもできますhttps://t.co/n3HQCcEbDl 24/
— 堀 正岳 @ めほり (@mehori) November 4, 2024
先日のマディソン・スクウェア・ガーデンでの集会で前座のコメディアンが「プエルトリコは大西洋に浮かぶゴミの島」と発言した影響でヒスパニック層がハリス氏に流れているという情報もあります 25/
— 堀 正岳 @ めほり (@mehori) November 4, 2024
一方で、ネヴァダ州のように共和党が期日前で票を積み上げているデータが見えている場所もあります
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ただこれには落とし穴があって、期日前が多い = 当日票も多いとは必ずしもいえないので、なにかをここから予測できるかはわかりませんhttps://t.co/qKWwhPgPu9 26/
つまり期日前だけでは予測はできず、期日前と郵送票(民主党優勢)が当日票(共和党優勢)をどれだけカニバっているのかも問題になります
— 堀 正岳 @ めほり (@mehori) November 4, 2024
結局は turnout、つまりそれぞれの支持者が来るか次第という、基本中の基本がすべてを決めることになります 27/
というわけで、当日の追い方です。これが基本の地図で、赤にも青にもなっていないところが接戦州。ここだけが問題になります
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東海岸で開票が行われ始めたらまずはペンシルヴァニア州をみるようにしましょう 28/ pic.twitter.com/J0reAeHJdg
開票は郊外が先に行われるので最初はトランプ氏優勢になって、それから米国時間の深夜にかけて都市部の開票が進んでハリス氏が追随するという、いつもの動きになるはずです
— 堀 正岳 @ めほり (@mehori) November 4, 2024
時間経過も含め、アメリカがいかに広くて多様な場所なのかを precinct ごとにみて楽しむのが当日のウォッチの醍醐味です 29/
もしペンシルヴァニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州がハリス氏安定なら、もう勝負は決まりです
— 堀 正岳 @ めほり (@mehori) November 4, 2024
いわゆる Blue Wall が崩れず、ハリス氏が勝利します 30/ pic.twitter.com/EF9v2cRrj1
ペンシルヴァニア州でトランプ氏が優勢になった場合、普通はノースカロライナ州なども追随するはずなのですが、最新の NYT / Sienna などでは逆にノースカロライナ、ネヴァダでハリス氏優勢という結果もあります
— 堀 正岳 @ めほり (@mehori) November 4, 2024
ハリス氏にはそういう勝ち筋もあります 31/ pic.twitter.com/vdd3GXEETk
接戦州1つか2つを荒そうつばぜり合いになるのか、それとも系統的な世論調査の誤差が顕在化してどちらかが圧勝するか、現時点ではわかりません
— 堀 正岳 @ めほり (@mehori) November 4, 2024
いま「こちらが確実に勝つ」といっている人は当てずっぽうを言って後付けで「自分は当てた」と言う人なので注意しましょう 32/
そして最大の問題は、もしハリス氏が勝ったとしても、トランプ氏は敗北を認めない点です
— 堀 正岳 @ めほり (@mehori) November 4, 2024
おそらく開票が終わる前に、都市部の票が入る前にトランプ氏は「勝利宣言」を行い、負けたとしても「不正だ!」といえる流れを作ります 33/
僅差ならば開票と結果の確定に数日かかると予想されているなか、法廷でのバトルや暴動なども危惧されている実に悲しい現状、それがいまのアメリカなのです
— 堀 正岳 @ めほり (@mehori) November 4, 2024
以前のような、もっとのんびりとしたウォッチができる時代に戻ってほしいなあ(おわり) 34/
前回の大統領選でもこんな流れでしたよね
— arles324 (@arles324) November 4, 2024
最初はトランプ優勢だと言われてましたが
蓋を開けてみたら・・・という展開
有識者っぽい人からのアメリカ大統領選挙の解説。
— にせ悟空@ビットコイン10億FIRE氷河期組 (@nisenise59) November 4, 2024
これ見るとどっちかが明らかに有利な状況ではなく、実際は僅差と考えた方がいいのかも。
投資への影響を無視して世界のバランスって意味では、個人的にはトランプに勝ってほしいけどね。投資的にはどっちがいいのか正直もう分からんわ。 https://t.co/YN0VUCMzHy
最近の世論調査の補正のトレンドとか知らんかった…。めっちゃ勉強になるスレッド。 https://t.co/i8bW6plb7Z
— 佳境2024。 (@CharJagan) November 4, 2024