首都圏の地上波放送、東京メトロポリタンテレビ(MX)のアニメ重視の姿勢が際立っている。同社によると、10月の番組改編後の放送本数は週62本で、地上波では国内一。うち38本が新作だ。小規模の独立局としてキー局との差別化を図った結果で、十数年掛けて今の形を作った。 (上田融)
◆夜間帯に照準 キー局と差別化図る
MXには、夕方から深夜にかけて「アニメゾーン」と呼ばれる時間帯がある。とりわけ午後十時?午前二時は全番組の78・6%、週二十二時間がアニメ番組だという。
放送するジャンルも幅広い。「やくならマグカップも 二番窯」は高校の陶芸部の女子生徒の日常を描き、「見える子ちゃん」は、ホラーコメディー。「ロボットもの」では、巨大ロボットで異星人と戦う「メガトン級ムサシ」などがあり、剣と魔法の世界に転生した男が人生をやり直す「無職転生」といった「異世界もの」もある。
「うちの強みは大量の作品。書店で好きな本を選ぶように番組を見てもらいたい」と山下学アニメビジネス局長。放送エリアは東京都と南関東だが、視聴と同時に評価を会員制交流サイト(SNS)で拡散させるファンがおり、作品情報は地方に広がるという。
一九九五年開局のMXが、アニメに力を入れるようになったのは二〇〇〇年以降。当初は「アルプスの少女ハイジ」などの旧作を集中的に放送していたが、徐々に制作者側の信頼を得て新作を放送するようになった。約十年前の放送のデジタル化で受信世帯が増え、多くの視聴者に番組を届ける環境も整った。
信頼を得られたのは、キー局では扱いづらいタイトルや内容でも、いい作品と判断すれば修正などを促し放送に持っていく姿勢が一つ。放送局に支払う費用がキー局より安いとされるのも理由とみられ、一〇年度に七十五億円だったMXの売上高は、二〇年度には百三十九億円になった。
アニメに注力する姿勢について、メディア産業論などが専門の大場吾郎・仏教大社会学部教授は「横並び志向が強い地上波で、多様なコンテンツを提供するという点で意義がある」と評価。一方で「放送局の経営も厳しい時代で、将来に向け、自分らしさを育てる必要がある」と指摘する。
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