20年前購入の市庁舎空調設備で不正、おわび20万円「納得できない」…市がメーカー提訴へ
20年前に市民の税金を使って導入した市庁舎の空調設備が、メーカー側の不正で必要な性能を満たしていなかったと分かったら、どうするか――。大阪府東大阪市は、メーカー側を相手取り、導入費を含む約5100万円の損害賠償を求めて近く裁判を起こす道を選んだ。設備に目立った不具合が出たことはないという。ではなぜ、市は多額の賠償を請求することにしたのだろう。(梨木美花)
問題の空調設備は、川崎重工業の子会社「川重冷熱工業」(滋賀県草津市)が製造。東大阪市が、2003年に完成した高さ115・8メートルの市役所本庁舎(地下2階、地上24階)の地上階用に2機を計約4600万円をかけて導入した。
しかし、川重冷熱は22年6月、1984年から38年にわたって製造品の検査データを偽っていたと発表。同社から東大阪市には、発表の5か月後の11月、納入した空調設備2機について不正があったと連絡が届いた。市の想定した冷房能力704キロ・ワットに対し、実際には665キロ・ワットしかなく、約5%低かったという。
不正が判明した設備以外の空調機も併せて使っているため、市には、冷房の利きが悪かったり、故障や不具合が頻発したりしたという認識はなかった。それでも、川重冷熱には何らかの補償をしてもらいたいと考え、話し合いを続けた。しかし、同社は「不適切な行為はあったが、設備の安全性に問題はない」と主張。「おわび」として20万円を支払うと伝えてきた。
市は、この提案に納得がいかなかった。
20年間、ほとんど不具合がなかったのは事実だが、「市民の財産である市庁舎の設備について、うそをつき続けられたのに、20万円で済ませられるわけがない。市民に対して示しがつかない。裏切られた思いだ」。市の担当者は唇をかんだ。
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