2023年3月、札幌市中央区のマンションで、交際相手の女性の両腕を殴り、ケガを負わせたとして、3月29日に25歳の男性が緊急逮捕された事件で、札幌地方裁判所は「警察官が女性の承諾を得ずにマンションの部屋の玄関ドアを開け、ベランダの窓ガラスを壊したのは違法だった」として、男性の勾留を取り消す決定を出していたことがわかりました。
この事件は3月22日から27日までの間、札幌市中央区のマンションで、同居する交際相手の30代の女性の両腕を何度も殴り、ケガを負わせたとして、3月29日に25歳の男性が傷害の疑いで緊急逮捕され、その後強制採尿により覚醒剤取締法違反(使用)の疑いで4月1日に再逮捕されたものです。
3月29日、女性の関係者からの情報提供を受けた警察は、マンションに行って男性に任意同行を求めましたが、男性が拒否して部屋から出てこなかったため、男性が逃走するなどして周辺住民が巻き込まれないよう、夕方から現場周辺を規制線で包囲。住宅街が一時騒然となりました。
午後8時ごろに警察はベランダから窓を割って部屋に突入し、男性を緊急逮捕していました。
これに対し男性の弁護人は、男性は逃亡するような素振りもなく、警察が任意同行を求めて緊急逮捕に至るまで4時間以上あったことから「十分に裁判所に逮捕状を請求・発布を受けることができる時間的余裕があった、緊急逮捕は違法」などとして、札幌地方検察庁から勾留を請求された札幌地裁に勾留決定をしないように4月3日に意見書を出しましたが、札幌地裁が勾留を決めたため、準抗告しました。
しかし、札幌地裁の井戸俊一裁判長は「捜査記録によれば、警察官は女性から依頼されて部屋に入ろうとし、女性の承諾を得てベランダの窓ガラスを破壊して突入。男性が傷害を認める言動したことなどから、その場で逮捕しなければ逮捕を困難にするので、緊急逮捕は違法ではない」として同月4日に準抗告を棄却。
その後、弁護人が女性に話を聞くと、緊急逮捕の前日に警察に対し「男性とは仲は良いし、大事にするつもりはない」と答えていることが判明。
さらに女性は緊急逮捕当日の警察の対応について、「マンションの1階玄関のオートロックを開けるだけという条件で警察にカードキーを貸したが、(男性が言うには)いきなり部屋に踏み込んだらしい」と話したということです。
女性は「札幌地裁の文書を聞いたが、全然違う。部屋に入ることは警察官に頼んでいないし、窓ガラスを割ることも承諾なんてしていない。むしろ絶対に割らないでと頼んだし、窓ガラスの修理代金を請求したいくらい」と明らかにしたため、弁護人は4月5日に最高裁判所に特別抗告しました。
これを受け札幌地裁の井戸裁判長は再度の考案を行い、「女性は事件化や警察官の立ち入りに消極的態度で、部屋の玄関ドアを開けることは承諾していなかった可能性は否定できず、警察官がドアを開けた行為はプライバシーの侵害」と述べ、「窓ガラスの破壊も承諾を得たとは評価できず、必要かつ相当な手段として許容される限度を超えていた」として、玄関ドアを開けた行為と窓ガラスを割った行為を違法と判断し、「この緊急逮捕をきっかけに行われた強制採尿は違法な捜査と密接」だとして、4月7日に男性の勾留を取り消しました。
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