北信地方の住民や多くの登山者に親しまれる飯縄山(1917メートル)の山頂近くにある携帯トイレブースの利用マナーが乱れている。飯縄山を愛する2人の常連登山者がボランティアで掃除や修繕を続け、何とか維持している状況だ。2人は年々悪化するマナーに疲れ果て、関係者の病気や高齢化もあって今後も維持し続けられるかは不透明。ブースを設置した長野市はマナー向上を呼びかけているものの、根本的な解決にはつながっていない。
常連登山者2人は市内の木村義弘さん(67)と南雲佳子さん(57)。木村さんは雨でなければ毎朝5時に登山口へ向かい、9時半には下山する。登り続けること約2千回。「山頂からの360度の眺めが素晴らしい」と話す。南雲さんは全国各地の山に登るための体力づくりに週1~2回、飯縄山へ。「冬は特に美しい。白と青の世界をぜひ見てほしい」
携帯トイレブースは山頂に続く稜線(りょうせん)上にある。大人1人が入れる大きさで、中に便座がある。棚に便袋が置いてあり、誰でも自由に使うことができる。使った便袋は口を結んで持ち帰り、登山口にある回収ボックスに入れることもできる。壁には正しい使い方を知らせる紙が何枚も貼ってある。<中略>
2人がブースの清掃に携わるようになったのはブースを管理、運営するNPO法人の理事、田中守さん(78)に誘われたことがきっかけ。木村さんは約3年前から、南雲さんは約5年前から、それぞれ「大好きな山が『きれい』と言われますように」「女性にも安心して登ってもらえるように」と思って始めた。
以来、使用済みの便袋が放置されていたり、便袋を使わずに用を足して床に排せつ物が散らばっていたりする状況に何度も出くわした。きれいにしたらきれいなまま使ってもらえるのではないか―。そう考え、自宅からマットを持ってきて敷いたこともあったが、結局、排せつ物まみれになって持ち帰った。
「水がない環境で、ためた雨水を大切に使って掃除するのは大変。新型コロナウイルス下では感染の危険もあり、どれだけ心配だったか…」。南雲さんは声を落とす。以前からこうした事案はあったものの、近年は特に多いといい「同じ問題をずっと繰り返している。何とかならないのか」と訴える。
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