北海道で放牧中の牛を次々と襲い、世間を震撼させたヒグマ「OSO18」。OSOが肉食化した原因の一つに、シカの死骸を食べて肉の味を覚えたのではないかとの指摘がある。
◆60頭以上の牛襲った…本来の主食は木の実など
OSOが2019年以降に襲い、負傷させたり殺したりした牛は60頭以上に上る。ヒグマは本来、木の実などを主食とし、動物を襲って肉を食べるケースはそれほど多くないとされるが、OSOは肉を主食にしていたとみられている。
◆ハンターが撃ったシカが山中に放置されている
OSOのような肉食の個体は特殊だと考えられているが、個体特有の問題ではなく環境が生み出した可能性があるとの指摘がある。
「ハンターが撃ったシカが山中でかなり放置されている。クマは腐った肉でも食べる。山をクマのレストランにしているようなものだ」。多くのシカの死骸が放置されており、その肉を食べたヒグマがその後、肉食化するかもしれないというのだ。
OSOの被害があった厚岸町ではこんなこともあった。昨年5月、国有林内で100頭分を超すほどのシカの骨や皮が見つかった。何者かが不法投棄したとみられている。町の担当者は年に何度かシカの死骸を回収することがあるといい、「ハンターには適切に処理するよう呼びかけている。ただ、猟期に捕って放置されても抑止する方法はない。どうやって周知するのかは課題」と話す。
◆獲物としての「うま味」少なく、盛り上がらない捕獲
狩猟が進まず、死骸が放置されるのは、シカを食材として消費するのが難しいこともある。
エゾシカの成獣はおおむね100~120キロ程度。1頭から取れる肉は40キロ前後だとされる。牛や豚、鶏と比べて歩留まりが少なく、処理方法も一定の技術が要る。加工できる業者が多くなく、独自にルートを持っていないと簡単には持ち込めない。
結果的に肉の単価が高くなるため、一般に流通するのは難しい。ジビエとして珍重されても、家庭で消費されるにはハードルが高い。道の担当者は「市場の拡大に取り組んではいるが、消費が活発にならなければ、牛や豚のように流通するのは難しい。捕獲熱がそれほど盛り上がらない遠因でもある」と話す。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/293631
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