石川県産ブランド牛「能登牛(うし)」の一大産地である能登町の能登牧場では、能登半島地震の影響で餌の供給がおぼつかない状態が続いている。県内最多の千頭を飼育しているが、停電で給水器が使えず、弱っていた1頭が死んだ。
スタッフは「当面は離れられない」と地震直後から世話に付きっきり。ただ、牧場につながる道路の損傷でトラックの通行が制限され、今後、餌が足りなくなる恐れもあるという。
(経済部・若村俊)
山手にある能登町泉の能登牧場までの道路は、3本のうち2本が崩落や陥没で使えず、残る1本も損傷して4トントラックがギリギリ通行できる程度となっていた。能登牧場の管理者である平林将専務(40)に現状を聞くと「人命第一なので牛の優先順位が低いのは仕方ない面もある」と歯がゆい思いを募らせる。
今後、道路の早急な復旧を働き掛けるというが、「餌の牧草や配合飼料が年末に届いた分しかない。1、2週間後には底を突きそうで、真綿で首を締められているよう」と窮状を訴えた。
地震発生後、夜通しうめき声を上げていた牛たちに対し、平林さんは元日以降、穴水町の自宅に帰らず、世話を続けた。7人のスタッフも牧場内で車中泊をしたり、避難先から駆け付けたりして健康状態に神経をとがらせているという。
徐々に生活インフラが復旧、牛が落ち着きを取り戻すと、10日には予定通り今年初めて東京市場に12頭を出荷した。
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