本連載では、受験世界史研究家・稲田義智氏の著書『絶対に解けない受験世界史3』(パブリブ)より一部を抜粋し、大学入試で実際に出題された世界史の「難問」を紹介していきます。本書における難問とは、「一応歴史の問題ではあるが、受験世界史の範囲を大きく逸脱し、一般の受験生には根拠ある解答がおおよそ不可能な問題」。受験生から一般の歴史好き、腕に覚えのある方に至るまで、ぜひチャレンジしてみてください。
問題文を読み「正解」を確信するも…選択肢を見て愕然
——————————————————————-
【早稲田大学『早稲田大学 2020年度 一般入試 人間科学部』より】
問題2 康熙帝は、明の残存勢力を平定して中国全土に支配を広げ,つづく( 5 )および乾隆帝にいたる3代の皇帝が統治した130年余が清の黄金時代として知られている。
設問X
(5)a 太祖 b 太宗 c 世宗 d 毅宗 e 成祖
——————————————————————-
【解答解説】
正解は雍正帝だなと思って選択肢を見て愕然とする問題。唐や宋以外の中国の王朝で廟号を問うのは非常識だろう。大体において太祖は開祖、太宗は2代目であるということからaとbは外せるだろうが(実際にヌルハチとホンタイジである)、残りはかなり厳しい。
正解はcの世宗で、朝鮮王朝のセジョン(世宗)と同じである。eの成祖は明の永楽帝が有名で、清朝にはいない。dの毅宗は全く知らなかったので調べてみたら、明の崇禎帝がいた。なお、康熙帝は聖祖、乾隆帝は高宗。世宗・高宗は最盛期の君主や中興の祖の廟号でそれなりに見かけるが、聖祖は珍しく、私自身康熙帝以外に知らない。似たような廟号の聖宗は遼の2代目、澶淵の盟を結んだ時の皇帝が有名。世宗は朝鮮王朝と清朝以外だと前漢の武帝が該当。高宗は唐の3代目と南宋の初代が最も有名。
もはや鉛筆を転がして選ぶしかない
——————————————————————-
【早稲田大学『早稲田大学 2020年度 一般入試 商学部』より】
問題1 問F 下線部Fについて(編註:『対比列伝』(『英雄伝』)を記したローマ帝政期の哲学者・著述家),この人物が晩年に神官を務めた場所はどこか。
1. アテネ 2. アレクサンドリア 3. デルフォイ 4. オリンピア
——————————————————————-
【解答解説】
知るかこんなもんと言いたいところだが、用語集のプルタルコスの説明文に記載がある。これは載っている方がおかしい。知らないなりに選択肢を削るということすらできず、受験生は鉛筆を転がすしか手段がない。
正解はデルフォイ。まあ神託をやってたしな、という直感が働いていた受験生がいたならなかなか勘が鋭い。しかし、実際にはプルタルコスが生きていた頃にはデルフォイの神託はすっかり廃れていて、それを復活させる目的でプルタルコスが最高神官に自薦で就任したという経緯がある。実はその直感は的外れなのである。用語集はそこまで解説してくれていない。果たして作問者がそこまで知っていて本問を出したのかは疑問で、用語集の説明だけ読んで実情を知らずに作ってしまったようにも思える。
こんなところで人生がかかった運ゲーをやらされるなんて
——————————————————————-
【立教大学『立教大学 2020年度 一般入試 2/14実施分』より】
問題2 B 3. これ(編註:抵抗や反発、反乱)に関する次の出来事a~dのうち,もっとも古いものを解答欄の①に,次に古いものを②に,以下同じように④まで年代順にマークせよ。
a. デカン高原でシヴァージーが反ムガル運動を糾合し,マラーター王となった
b. ネーデルラントで,新教徒がスペインに対して反乱を起こし,オランダ独立戦争が始まった
c. 明が,重税による民衆生活の窮乏を背景とする李自成の乱によって滅亡した
d. モスクワ大公国で,農奴制の強化に対してコサックによるステンカ=ラージンの反乱が起きた。
——————————————————————-
【解答解説】
bは1568年。オランダ独立戦争と三十年戦争をくっつけて八十年戦争と呼ぶので、覚えやすい。cも明清の交代が1644年、基礎的な年号なので、立教大を受けるなら必須だろう。
全文はこちら
https://news.livedoor.com/article/detail/25504596/
続きを読む