特定外来生物のツマアカスズメバチが、福岡県内で定着の動きを見せている。長崎県の離島・対馬で2013年に定着が確認されて以来、目撃情報は九州各地で数件あった程度だが、今年は福岡市などですでに3例に。ミツバチを襲って養蜂に被害を出したり、市街地に巣をつくって人を刺したりする恐れがあり、環境省が実態調査に乗り出す。(植田優美)
「これは何やろうか?」。15年ほど前から趣味でニホンミツバチの養蜂を行う福岡市東区の石谷統冶さん(81)が、庭で見慣れないハチに気づいたのは4月下旬。毎年見かけるキイロスズメバチやオオスズメバチよりも小柄で、飛行中のミツバチを猛スピードで狩っていく姿が異様に映った。
数日後、長男が仕留めた個体を見ると、全体的に黒っぽく腹部はオレンジ色だった。「対馬にいる外来のハチじゃないか」。スマートフォンで調べると特徴が一致した。その後、環境省がツマアカスズメバチの女王蜂と確認。翌5月には、石谷さん宅から5キロほど離れた久山町の養蜂場でも女王蜂が見つかった。
環境省によると、ツマアカスズメバチは、ミツバチを捕食するため養蜂業への影響が懸念されている。高所に直径1メートルにも達する巣をつくる習性があり、都市部のマンション高層部にすみ着く恐れもあるという。
国内では12年に長崎県対馬市で初めて確認された。韓国から侵入したとみられ、13年には50個以上の巣が見つかり、環境省は定着と判断。15~19年には九州・山口の計5市で巣や個体が発見されたが、駆除されて以降は目撃が途絶えていた。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220910-OYT1T50162/