北海道のある町に知る人ぞ知る「看板のない鉄砲師」がいる。
私は羆(ヒグマ)とハンターの攻防をテーマに取材していながら、「銃」や「射撃」については門外漢だ。だが「銃」のことを知らなければ、勝負の機微に触れることはできない――そんなことを考えていたときに、ひょんなことから羆ハンター御用達の鉄砲職人である山崎和仁(仮名)の存在を知った。(全2回の1回目/後編に続く)<中略>
ヒグマの頭は絶対に撃ってはいけない理由
「撃つのであれば、前脚の付け根、つまり心臓か、ネック(首)ですね。頭は絶対に撃ってはいけません。見たらわかりますが、クマの頭部の骨って犬の頭と同じくらいしかなくて、正面から見える部分は、ほとんどが毛と肉だけ。形状も正面から見ると幅も狭く一番幅のあるところは眼孔部分です。鼻先から頭頂に向かって傾斜が少なく被弾しにくい。頭を撃つとすれば、側面、特に耳の後ろ以外にはない。だからそれ以外の場所は、30口径の弾で頭を狙っても、まず入っていかない。固い頭骨にはじかれるか、外側の肉を削ぐだけで致命傷にはならず、下手に撃った人は確実に殺されてしまうと思います」
私は元国鉄の運転士だった芦別のハンター、岡田崇祚に聞いたこんな話を思い出した。
「オレの後輩が運転していた汽車がヒグマを轢いたことがあるんだ。死体を取り除いて再び発車したところ、ブレーキからギィーギィー異音がする。再び止めて調べてみると、ブレーキの鉄と鉄の部品の間に血まみれのクマのアバラ骨が挟まってた。それぐらいヒグマの骨っていうのは固いものなんだ」
全文はこちら
https://bunshun.jp/articles/-/57356