3年前、奈良県御所市で人助けのために公道の走行ができない重機を運転した男性が、運転免許の取り消し処分となりました。男性は納得できないとして、処分の取り消しを求めて提訴。その後、1審、2審ともに訴えは退けられ、男性は判決を不服として最高裁に上告しました。“人助け”をしたら免許取り消しに…、これまでの裁判や男性の思いに迫ります。
奈良県御所市の田園地帯。地元で30年以上、建設業を営んできた高田浩一さん(58)。3年前の10月のある日、知り合いから助けを求められました。
(原告 高田浩一さん)「近隣の86歳の老人が、うちの方に『助けて』という形で来られました。稲刈り途中に、コンバインのキャタピラー(無限軌道)が切れて動かないようになったと」
故障したコンバインをショベルカーで引き上げてほしいと頼まれたのです。
(原告 高田浩一さん)「わらにもすがる思いでうちに来られたと思いますんで、やっぱりお互いさまやし、『すぐ行きます』という言葉が出ましたからね。道から田んぼの中に入りまして、向こうにあったコンバインを吊って手前まで持ってきました」
高田さんはショベルカーで田んぼへ向かい、コンバインを引き上げた上で、自身の倉庫に戻るという形で、付近の道路を約1.5kmにわたりショベルカーで走行しました。走行速度は時速2kmほど。幅2.5mにも満たない狭い道を巧みに走行したといいます。
しかし、髙田さんが大型特殊自動車の運転免許を持っていなかったため、奈良県公安委員会は2年間の運転免許取り消し処分としました。
ショベルは「建設機械であり自動車ではない」処分取り消し求め提訴
高田さんのショベルはキャタピラが付いており道路交通法上、公道を通行することはできませんが、パワーショベルは「建設機械であり自動車ではない」とし、走行時も危険性が低く、髙田さんは免許取消処分は「裁量権の逸脱」だとして提訴していました。
去年11月の奈良地裁・1審判決ではパワーショベルは大型特殊自動車にあたり無免許運転と判断。また「運転が格別危険性の低いものではなく、工事受注の減少などの事情は運転者としての危険性とは無関係」などとして、裁量権の逸脱は認められず、訴えは退けられました。
建設業の仕事にも、日常生活にも欠かせない運転免許を突然奪われた高田さん。
(原告 高田浩一さん)「ほとんど無収入の中で、貯蓄を切り崩していままで来た。『あなたが起こしたことは罪や』と言う人もいました。しかしながら、そうじゃないと思います。人が『助けて』と自分に求めてこられたら、やっぱり素直に助けてあげるっていうのが、善意の心を持っていたら当然の話だと思います」
高田さんはこの判決を不服として大阪高裁に控訴していました。
そして、今年4月の控訴審判決で大阪高裁は「困っている人を助ける自然な行いが地域の習慣で存在するにしても、ショベルカーを無免許運転することがやむを得ないと評価できる緊急性があったとは言えない」などとして控訴を棄却しました。
高田さん側は、この判決を不服として今年4月末に上告し、MBSの取材に対して次のように上告に至った決意について話しました。
(高田浩一さん)「2審の判決後、(免許取消の欠格期間を終え)私自身の生活を少しでも良くしようと免許を取る勉強をしています。しかし、私が今上告を決めたのは、若い頃から2年前まで大型自動車免許証を含め、誰よりも免許を大切にしてきたと思っているからです。人助けをしたのになぜ…と苦しむ日々は今も続いていますが、このままでは取り消された免許は、自分の罪の代償として受け入れなければならなくなってしまいます。パワーショベルが特殊自動車に該当した時の矛盾も含めて、今回上告を決断しました」
“人助け”をしたら免許取り消しに…、その裁判の判断は最高裁に委ねられることになりました。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/475106?display=1
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