各大学が実施している入試改革。難関私大である上智大学では、英語の外部試験の「TEAP」などを活用する入試改革を行った結果、入学者の英語力が急上昇。一方で、実志願者数の減少に歯止めがかかっていないという。なぜなのか。
「課題もあるが、入試改革によって英語力の高い学生が集まってきている」
こう話すのは、上智大入学センターの飯塚淳事務長だ。
上智大は2021年度から入試改革を実施。大学入学共通テスト(旧・大学入試センター試験)を活用した入試を初めて実施した。
また英語については、全入試方式で外部検定試験の結果を活用することを決めた。それ以前の一般入試では「TEAP利用型」と「学科別」の方式があり、TEAP利用型のみで英語の外部検定試験を活用していた。21年度入試からは一部の学部などを除き「TEAPスコア利用型」「共通テスト併用型」「共通テスト利用型」の3つの方式を導入した。
共通テスト併用型と共通テスト利用型の方式では、共通テストの英語科目の得点のほか、英検やGTECなど外国語外部検定試験のスコアを任意に提出できる。共通テストの点数への「加点」や、共通テストよりも評価の高いスコアの場合は「みなし得点」として利用することもできるようになった。
入試改革後の志願者数を見てみると、21年度は約2万6千人で前年度より微増。22年度は約2万2500人で、前年度より約3700人減少した。河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員はこう見る。
「昨年の入試で、早慶や明治、青学、中央、法政など多くの私大で志願者が大きく減少するなか、上智は共通テスト利用型の入試を導入したことで国公立大との併願者を集め、志願者を増やしました。今年志願者が減少したのは、昨年、他大学で競争倍率が落ちるなかで、上智大の倍率が落ちず相対的に難化したため、それを見た今年の受験者が敬遠した結果でしょう」
河合塾によると、上智大の受験生が国公立大学を併願している割合は、入試改革前の20年度は42%だったが、改革後の21年度は53%に増加した。東京大の併願者は5%から8%、一橋大は4%から6%、京都大は1%から2%にそれぞれ増えた。合格者の偏差値帯では、偏差値70以上が20%から26%へ増加したという。
「共通テスト利用の入試を導入する前は私大専願者が受験者の大半を占めていましたが、国公立大学との併願者が劇的に増えている。しっかりと勉強してきた受験生を集めることができているのではないか」(近藤氏)
また、冒頭で飯塚事務長が述べたように、英語力のある入学者が増えている。上智大によると、4月入学者の入学時点でのCEFR B2レベル(英検準1級レベル)取得者は、入試改革前の20年度が17.4%だったのに対し、入試改革後の21年度は35.8%に大きく増加したという。
一方、上智大が課題視しているのが「実志願者数」の減少だ。
「志願者数」は、一般的に併願を含めたのべ人数の志願者数を指す。つまり、1人の受験生が同じ大学で3学部を受験すれば、志願者数は3人になる。これに対し「実志願者数」は、1人の受験生が同じ大学で何回併願しても1人と数えた志願者数のことだ。
上智大の実志願者数は、18年度は約1万8千人だったのが、19年度は約1万6千人、20年度は約1万5千人と減少。さらに入試改革が行われた21年度は約1万3千人、今年度は約1万1千人と、減少が加速している。ある上智大関係者は「大きな声では言えないが志願者数が減ると検定料収入が億単位で減る。その点をとらえて、幹部の中には『入試改革は失敗だったのでは』と言う人もいる」という。
なぜ入試改革が実志願者数の減少につながるのか。先の飯塚事務長はこう分析する。
「外国語の民間試験のスコアを任意提出としましたが、『英語のスコアを持っていないと厳しい』という印象を与えてしまった可能性がある。以前なら『英検は持っていません』という受験生も多く挑戦してくれましたが、そういう人が減りました。外国語外部試験が提出できなくてもそれほど大きなビハインドにならないことをもっと伝える必要があると考えています」
上智大は23年度入試の概況を今年4月に公表。これまで国公立大志願者が受験しやすい「4教科型」(外国語・国語・地歴公民・数学など)だった共通テスト利用方式の入試について、私大専願者が受けやすい「3教科型」(外国語・国語・地歴公民/数学など)も実施するという。これは実志願者をより集めるための方策だが、飯塚事務長は狙いをこう語る。
全文はこちら
https://dot.asahi.com/dot/2022072100081.html
続きを読む