ユニ・チャームは5月16日、一部商品について注文集中による出荷が遅延している旨をアナウンスしていたが、27日付「日経クロステック」記事によれば、ゴールデンウイークに実施した基幹システムの更新で新基幹システムと物流システムの接続でデータ連係に不具合が生じたという。
システム障害による出荷トラブルといえば、江崎グリコも4月初めに障害が発生し、大半のチルド食品の出荷再開時期がいまだに未定という事態が続いている。グリコは業務システムについて、独SAPのクラウド型ERP「SAP S/4HANA」を使って構築した新システムへ切り替えるプロジェクトを推進してきた。旧システムからの切り替えを行っていた4月3日、障害が発生し、一部業務が停止。
外資系のプロポーザルは見栄えが良い
なぜデロイトが主幹事ベンダを務めるプロジェクトで相次いで問題が起きているのか。
「企業が開発案件で主幹事ベンダを選ぶ際は、コンペで複数社から提案を受けるが、国内ベンダに比べて外資系のプロポーザルは非常に見栄えが良く、『ウチに発注すればこんなに素晴らしいシステムと業務フローができますよ』と理想的な完成像が描かれるので、特にITノウハウの低い企業だとコロッと信じ込まされてしまう。だが、各部門の実際の業務フローはかなり複雑になっていたりするので、画にかいたとおりにはいかない。業務フローの見直しは発注元企業側のタスクで、実際のシステム開発作業は別の開発会社のタスクなので、プロジェクト全体がうまくいかないというケースは生じる。
実際にグリコとユニ・チャームで何が起きていたのかは分からないが、外から見ている限りは典型的なプロジェクト失敗例のように感じる。もっとも、こうした失敗例はデロイトなど外資系ベンダに限らず、国内ベンダでも多く起きるものなので、デロイトだけが特段に何か問題を抱えているというわけではないだろう。システム開発は規模が大きくなればなるほど携わる会社や部署、人間の数は多くなるので、大小含めてトラブルや障害は絶対に起こるもの。さすがにグリコのように多くの商品が数カ月にわたって出荷停止になるというのは異例だが、一定程度、業務に支障が生じる事態は避けられない。もっとも、今回の2社の事例を受けて『デロイトに任せて大丈夫なのか』という評価が広まり、発注に二の足を踏む動きは企業の間で出てくると予想され、それなりにデロイトは影響を受けるのは避けられない」(大手SIer社員)
国内ベンダと外資系ベンダの違い
外資系ベンダを利用する際には、発注元にも一定水準のITに関するノウハウが求められるという。
「国内ベンダと異なり、一般的に外資系コンサルは自社のやり方でどんどんプロジェクトを進めて、顧客と交わした契約で定めた自社の担当範囲だけに専念する傾向があるため、システム構築の実作業を担う開発会社を含むプロジェクト全体の細かい部分まで、きちんと目配せができていなかった可能性も考えられます」(森井昌克氏/神戸大学大学院工学研究科 特命教授/5月4日付当サイト記事より)
また、金融機関のシステム部門管理職はいう。
「国内ベンダの場合、契約うんぬんに関係なく、顧客側のタスクであっても気になる点や懸念点などがあると『これって大丈夫ですかね』などと言ってくるケースが多い。それがベンダと発注元の役割分担や責任の線引きを曖昧にしてしまったり、契約で定めた以上のボリュームの作業をベンダがやらされてしまうというマイナス面を生むことがある一方、結果的に“穴を埋めて”トラブル回避につながるという面もある。一方、外資系ベンダ・コンサルは『自分たちの担当範囲はここまで』とドライに線引きをしてくるし、顧客側の事情で問題が生じた場合は『ではプロジェクトを中止します』『追加費用がかかります』と言ってくるので、発注する側の企業にもそれ相応の高いスキルが必要となる。
今回の件でいえば、あくまで推察だが、デロイト側は『この作業はグリコ側・開発会社側の担当』と考え、グリコ側は『これはデロイト側がやってくれているはず』と考えて“作業の漏れ”が数多く発生した結果、プロジェクトがうまく回っていなかったのではないか」
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