なぜ若者のテレビ離れが進んでいるのか。元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道さんは「テレビ業界全体がコンプライアンスを意識しすぎるようになり、番組作りが萎縮している。BPOの番組審議のあり方を考え直さなければ、もうテレビから面白いバラエティー番組が出てくることはないだろう」という――。
コンプライアンスを逆手に取った「水曜日のダウンタウン」の好企画
4月27日放送のバラエティー番組「水曜日のダウンタウン」(TBS系)を見て思わず涙が出た。
その日の企画は「若手芸人、コンプライアンスでがんじがらめにされても従わざるを得ない説」の検証。「罰ゲーム」「下ネタ」「コロナ対策」「反社+α」という4つのテーマに応じて、不条理な自主規制について若手芸人の反応を試した。
このうち、お笑いコンビ・そいつどいつは、架空の番組「商店街ウォーカー」のロケとして、商店街の店員に「反社ではないですよね?」と確認させられたり、街を歩く際に「番組のスポンサー企業ではない自動販売機を隠しながら歩いてくれ」と頼まれたりする。そして鯛焼き店での試食では「頭から食べると残酷」「中身のあんこが残酷に見えるかもしれない」などと言われる。そいつどいつは、当初はスタッフの指示に従うが、最後には「これでは面白い番組にならない」と正面から反論するようになる。
私はよくできたドキュメンタリー番組だと思った。「水曜日のダウンタウン」のセンスによって見事にお笑いに昇華されていたものの、まさに今テレビマンたちが置かれている「番組の作りづらさ」を皮肉っているからだ。
思わず仲間のテレビマンたちとこの番組について話をした。やはり仲間たちも同じように感じていた。「これは明らかにBPO(放送倫理・番組向上機構)に対する悲痛な抗議の叫びだろう」「頑張れ! 水曜日のダウンタウン」などという声がテレビマンたちから上がった。
そう、近年バラエティー番組を作ることは、あまりにも不自由な作業となってしまった。
なぜ日本のテレビはつまらなくなったのか
特にテレビマンから不満の声が上がっているのが、4月15日に発表された「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に対する見解だ。「視聴する青少年の共感性の発達や人間観に望ましくない影響を与える可能性がある」として、放送局に改善や配慮を求めたものだ。
BPOは「痛みを伴う笑いは、いじめを助長する」というのだ。ある民放キー局のバラエティー番組担当のプロデューサーはこう話す。
「いまバラエティーの現場的には例の『痛みを伴う笑いNG』っていうのが疑念を持たれています。BPOにそこまで言われる筋合いなのか、BPOが言ったからといってそのまま従う必要があるのかは率直に疑問です。ダウンタウンの年末特番で恒例だった「ケツバット」は放送そのものがなくなりましたが、それでいじめは減ったのしょうか」
BPOは「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について去年8月から審議に入り、その結論としての見解が4月15日に出されたわけだが、去年8月の審議入りの頃からすでにバラエティーの制作現場はかなり萎縮してしまっている。
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https://president.jp/articles/-/57423
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