東京電力福島第一原発から海洋放出が計画される処理水には、浄化処理で取り除けない放射性物質が含まれています。そもそもどのような水なのでしょうか。(渡辺聖子)
Q 処理水とは?
A 原子炉内の溶け落ちた核燃料(デブリ)の冷却作業によって発生する高濃度汚染水を、多核種除去設備(ALPS=アルプス)で浄化処理した水です。大半の放射性物質をほとんど除去できますが、トリチウムが取り除けずに残っています。
◆大気中にも人間の体内にも存在 放射線は弱い
Q トリチウムって何?
A 「三重水素」と呼ばれる水素に似た放射性物質。主に水素と同様に酸素と結び付き水となり、大気中の水蒸気や水道水、人間の体内など身の回りに存在します。放射線は紙1枚も通らないほど弱く、放射能は約12年で半減します。
◆人体に入っても排出 実験では魚の体内の濃度も戻る
Q トリチウムの人体への影響は?
A 体内に取り込んでも、ほとんどは水と一緒に排出され、内部被ばくの影響も低いとされます。東電が海水で薄めた処理水で魚を育てた実験では、魚の体内のトリチウム濃度は処理水の濃度以上にはならず、通常の海水に戻すと時間がたつにつれて体内のトリチウム濃度も下がりました。
Q どれほどの濃度のトリチウムを海洋放出するの?
A 東電は処理水に大量の海水を混ぜ、1リットル当たりの濃度を1500ベクレル未満にして放出すると計画しています。国の排水基準の40分の1、世界保健機関(WHO)の飲料水基準の約7分の1の水準です。
◆年間22兆ベクレル未満を放出 海外では1京ベクレル放出も
Q トリチウムの放出量に制限はないの?
A 計画では年間22兆ベクレル未満にとどめるとしています。トリチウムは原発を運転すると原子炉内でも発生し、各国は基準に基づき放出処分しています。経済産業省によると、2021年の年間放出量は韓国の古里原発が49兆ベクレル、中国の陽江原発が112兆ベクレル。日本では福島事故前の3年平均で全原発から計約360兆ベクレルを放出。核燃料を溶かす再処理工場の放出量は桁違いで、フランスのラ・アーグ再処理施設は21年で1万兆(1京)ベクレルでした。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/263261
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