「空気中のサンプルから環境DNAを採取しよう」と試みたのはリンガード氏らの研究チームだけではなく、イギリスやカナダの研究チームも同様のアプローチで空気中の環境DNAを採取する研究を行っていました。ヨーク大学で助教を務めるエリザベス・クレア氏が率いた研究チームは、2021年3月に「空気中の環境DNA採取の概念実証に成功した」と発表しました。
概念実証に成功した後、クレア氏らの研究チームはイギリスのハマートン動物園でサンプルを採取して環境DNAを分析。その結果、ディンゴやトラといった動物園で飼育されている種だけでなく、イギリスでは個体数の減少が問題視されているナミハリネズミといった非飼育種のDNAも確認されたそうです。
さらにクレア氏らの研究チームは、動物のDNAが飼育場所から100メートル以上離れた所で採取したサンプルにも含まれていることや、建物内で飼育されている動物のDNAが建物外でも確認されたこと、動物ベースの餌に含まれるDNAもサンプル中に存在したことなどを報告しています。
リンガード氏らの研究チームとクレア氏らの研究チームは、いずれも非常に類似した研究を行っている海外の研究チームの存在に気付いていなかったとのこと。クレア氏は、「これほど同一性の高い実験が全く同時に、しかもお互いのことを全く知らずに行われたのは初めての経験です。『DNAを空気中から掃除機で吸い取る』という少しクレイジーな作業をしている時に、他の人が同じことを試みてそれがうまくいくことを独自に証明してくれるのは、本当にうれしいことです」と述べました。
空気中から環境DNAを収集するという手法は、広い環境における陸上生物の生物多様性を評価できるだけでなく、生態系への影響が少ないというメリットも期待されています。しかし、この研究分野はまだ初期段階であり、風や太陽光などが精度に及ぼす影響などは不明だと両研究チームは認めています。
https://gigazine.net/news/20220107-collect-environmental-dna-air/