入居者からの食材費の過大徴収が明らかになった障害者向けグループホーム(GH)大手運営会社の「恵」。元社員たちによると、現場には徴収額を大幅に下回る予算しか与えられず、「1食30円しか使えなかった」「利用者がどんどん痩せていった」といった証言が出ている。ある元社員は「食材費の配分額を増やしてほしいと役員に頼んだが、断られた」と話しており、多くの関係者が「会社の利益優先主義」を背景に挙げた。
スタッフが自腹切ることも
GHの食事は、実際にかかった食材費を徴収するのが本来だが、恵は事前に「月2万5千円」などと定額で設定。数年前まで勤務していた元社員によると、入居者や家族の口座から引き落とし、本部が各GHに現金で配っていたという。
平日は2食で、土日は3食。この元社員が勤めていた愛知県内のGHでは「入居者の人数に対し『どう考えても無理』という金額しか配分されなかった」と振り返る。少しでも安いスーパーを回り、スタッフが自腹を切ったり、食材を自宅から持ってきたりして提供していた。
配分額は徴収の3分の1程度
徴収額に比べ実際の配分額は3分の1程度。「おかしい」と思い、役員に増額を求めたが、「会社の決まりだから、その金額でやって」と断られたという。
恵が運営する障害者向けの住宅型有料老人ホームで働いていた看護師は「パンフレットでは、1食数百円と書いていたのに、実際は1食30円の予算しかなかった」と証言。「ご飯を糸こんにゃくでかさ増しして、おかずを上に載せた丼だけで済ませていた。カップラーメンだけのこともあった」と話す。
恵の訪問看護ステーションに勤めていた別の元社員は「食材費はなるべく削るよう役員から指示が下りていて、粗末な食事のため低栄養で痩せていく入居者が何人もいた」と憤り交じりに明かした。
「会社は利益のことしか」
過大徴収は故意だったのか。ある元幹部社員は「徴収する食材費に、買い出しに使う車のガソリン代や調理の人件費も含めてよいのだと勘違いしていた」と否定。一方、別の元社員は「上層部は分かってやっていた」と話しており、見方は分かれる。ただ、元社員の多くが「会社はとにかく利益のことしか考えていなかった」と口をそろえた。
恵は今年春ごろから入居者の家族向けに説明会を開き、「全事業所を調査し、利用開始時点までさかのぼって返還する」との方針を示している。だが、GHを既に退去したある障害者の家族は「一切、説明がない」。
元社員らは「ここ数年で事業を急拡大させたため、通常の運営すら追い付いていない」と指摘。退去者を含めて完全に返還されるかどうかは不透明感が漂う。
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