しかし、現場はそんなに単純なものではないとも。特にこの男性が迷惑しているのが、都内の一部主管(エリア)で始まったドライバーの「分業制」だという。
「もともとヤマトのドライバーは『SD』(セールスドライバー)と呼ばれ、集荷や配達のほかに営業も行なうのが基本でしたが、分業制により、配達専門の『DD』(デリバリードライバー)やクール便専門の『CD』(クールドライバー)に分かれたんです。
クール便は、7月のお中元、年末年始のクリスマスケーキ、おせちなど通常期と繁忙期で物量がまるっきり変わる予想しづらい荷物。それだけに今回の分業制の導入で『繁忙期に間違いなくパンクする』とドライバーの間でささやかれています」
1年前から始まった「CD」の部署に異動した別の社員男性は「業務効率化とはほど遠い」と断言する。
「CDは従業員を苦しめるものでしかありません。ヤマトは営業所を各地に多く構えているため配達員ひとりに対して担当区域が狭く、たくさんの荷物を配れるのが強みでした。しかし、CDで配達範囲を広げたことで、個々の配達に時間がかかってしまう。
分業制によってクール便の鮮度が保たれ、品質がよくなると本社は言ってますが、トラックいっぱいに荷物を積んでいるから荷台を開けるとすぐに荷物が温まってしまい、品質に大問題が起きています。そのうえ、年収も100~200万円下がるから誰もやりたがらない。おもに主管支長がCDを指名していますが、『指名されたら罰ゲームだ』ともっぱらです」
慣れないエリアへの統合で「そのうち事故を起こすよ」と退職者も
こうしてセンターの集約化によって去年6月に引き起こされたのが、都内のある主管で起きた大量退職。およそ20人以上の正社員が一斉に自主退職して深刻な人出不足に陥り、8月には都内全域から応援が駆けつける事態に発展した。
応援に駆り出された首都圏在住の40代の正社員男性は当時をこう振り返る。
「自分は早朝に電車に乗ってヘルプに駆けつけたんですけど、なかにはビジネスホテルに前泊した社員もいました。現場の主管のドライバーに聞くかぎり、やはり一番の原因に挙げられるのがCDだったそうで……。
無理やり異動させられたドライバーが『ふざけんな』と怒り、同業他社や別業種に転職するために大量に自主退職したとのことでした。そもそも同じ主管で一斉に何十人も辞めるなんて聞いたことがないし、その人員を埋めるために今度は委託業者がメインになるらしいです。まさに本末転倒って感じですよね」
https://shueisha.online/newstopics/189959