人間とウミガメの命を軽視
静岡県の川勝平太知事は、遠州灘海岸の南海トラフ地震・津波浸水想定地域の「大型ドーム球場建設」にゴーサインを出した。「人命軽視」と怒る浜松市民や、絶滅危惧種・アカウミガメを守るNPO団体は「絶対反対」の署名運動をスタートした。
浜松市の遠州灘海岸に計画される県の大型野球場については、2022年11月27日現代ビジネス(「浜松のドン」スズキ相談役、鈴木修が裏で糸引く、大型野球場計画の「大矛盾」)記事で紹介している。
浜松市民らが「人命軽視」と怒っているのはなぜか。遠州灘海岸には高さ13~15メートルの防潮堤がある。それをもって川勝知事は「南海トラフ地震の津波対策は万全」として、防潮堤に隣接する津波浸水想定地域に大型野球場建設を決めたからだ。同じ遠州灘海岸に位置する中部電力・浜岡原発には、19メートルの津波を想定して高さ22メートルの防潮堤を建設、さらに22・7メートルに嵩上げする計画している。まさか、浜岡原発の地域だけ津波想定が極端に高いわけではない。
大勢の人が集まる大規模施設計画で、県の津波対策はあまりに不十分である。県民の安心、安全を守る行政の役割を放棄したと言える、まさに「人命軽視」である。
一方、日本有数の産卵地として知られる遠州灘海岸の国際保護動物かつ絶滅危惧種のアカウミガメ保護問題を、川勝知事は無視しようとしている。
2022年8月、鈴木修氏らのプロ野球開催を想定した「2・2万人収容の全天候型ドーム」の要望に、川勝知事は「ウミガメへの照明の影響もこれで大丈夫だ」などと述べて、ドーム球場にすることでアカウミガメの保護問題は解決したと思い込んだ。
県は2022年夏、約850万円を掛けてアカウミガメの照明施設による影響調査を行った。その結果を受けた県議会委員会で、専門家の亀崎直樹・岡山理科大学教授は「調査が不十分だ」と指摘、さらに遠州灘海岸で35年以上、アカウミガメ保護に取り組む特定非営利活動法人「サンクチュアリN.P.O」の馬塚丈司理事長は「たとえドーム球場でも子ガメへの悪影響は避けられない」などとして断固、反対する姿勢を示した。
調査費に3000万円の「怪」
ところが、川勝知事は2023年2月16日の会見で、「アカウミガメの件では、調査が不十分だということでそれ(調査)をやり直した」と発言した。この発言はどう考えても“嘘”である。アカウミガメの産卵シーズンは、毎年5月~8月であり、孵化した子ガメが海に戻るのは8月~10月である。
担当課がどのように説明したのかわからないが、まだ夏場の産卵シーズンさえ始まっていない。昨年夏の調査以後、アカウミガメの上陸など全国どこにもないから、川勝知事が言う照明施設によるアカウミガメへの影響調査のやり直しなどできるはずもない。
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https://gendai.media/articles/-/106561
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