●いい思い出が多いエスパー伊東さん
お笑い芸人のエスパー伊東さん(本名・伊東万寿男)が1月16日にてんかん重積のため入院先で亡くなったことが伝えられた。63歳だった。ボストンバッグに全身を入れたり、茹でたばかりの熱いおでんを笑顔で食べたり、体を張った芸は、超能力ならぬ「高能力」と称して人気だったが、18年に歩行も厳しい股関節の負傷から休業。翌年には多発性脳梗塞もあり、晩年は認知症から面会に訪れた友人の顔も認識できていなかった。
バラエティー番組のリポーターとして自宅を取材したのがきっかけで、伊東さんとは一時、仕事抜きで何度か食事をしたり、自宅に遊びに行かせてもらったりしたから、個人的にもショックだ。
いい思い出が多かったが、それでも、どうしても書いておきたい苦い記憶もある。伊東さんの稼ぎに群がっていた三流芸人たちのことだ。
●人柄が良すぎた芸人の訃報
12年、伊東さんの自宅マンションに空き巣に入り、現金25万円を盗まれる被害があった。これは芸人仲間ら知人が日ごろから自宅に出入り、金目のモノを盗んでいたことが分かった。当時の伊東さんは間違いなく「売れっ子」で、テレビでこそB級芸人扱いだったが、結婚式やパーティーなどでの営業予定が3ヵ月先まで埋まっており、「1回15万円や20万円になる」と言っていた。単純計算すると月500万円ぐらいの稼ぎで、実際にそれに相当する貯金通帳もチラリと見せてくれた。ただ、あまりに“天然”なお人良しキャラ。酔って玄関のカギを失くしたことも喋ってしまうため、周囲の人々が自宅に無断で出入りする奇妙な生活環境にあった。その根底にあったのが伊東さんの「寂しがり屋」という人柄だった。
リビングルームには、漫画本が壁一面の本棚に並び、入りきらないものはトイレの中まで積み上げられていた。別の部屋には衣装ケースに、マッチ箱やカップラーメンの蓋など、ゴミのようなものが丁寧に種類別に分別されていた。清潔だが、病的にモノを捨てられないところは、いかにも寂しがり屋。
「僕は寂しがり屋じゃありません。孤独死が怖いだけです」
本人はそう言っていたが、筆者が土産に渡した菓子の包み紙までも折り畳んで保存されていたのを半年後に見つけたときは本当に驚いた。
「こういう菓子折りのお土産を持ってくるのはジーパンさん(筆者)だけ」と笑っていた。
贈り物をされたことはもっとあっただろうが、そんな話をしたのは、彼がいつも「支払う側」だったからではないか。高収入を貯金もせずキャバクラで散在するが、夜の街では金のない芸人たちが群がり、飲食代をすべて伊東さんに出させていたのは、よく知られた話だ。
「芸人仲間の分まで代金を払うから高くつくんですよ。僕だけなら20万円ぐらいなのに、呼んでもない人が付いてくるから100万円になっちゃう」
芸人界隈ではありがちな話には嫌悪感があったから、筆者は伊東さんに食事代などお金を払ってもらったことは一度もなかった。しかし、自宅では、懲りずに「財布にあった30万円が消えた」など盗難被害を何度もしていた。あるときは、その直前に訪れたのが当時30代の芸人Aが犯人だと見られた。
「彼が家に来ると、いろいろモノがなくなるからイヤだ」
伊東さんはそう言っていたが、Aが先輩格のエスパーさんを「親友」と呼んでいたからか、イヤなのに来訪を断れない様子だった。Aだけでなく、Aの友人の芸人までもが次々に金を借りに来て「300万円以上は貸している」と言っていた。伊東さんは几帳面で手帳にしっかり貸した日付、金額も書いてあった。「ちゃんと返済してもらうように」と助言したが、当時の伊東さんは高収入、気にせず散財し続けていた。
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https://news.yahoo.co.jp/articles/1ec55eed0bd0e72caf86433fc2ddcb3022a4b5cb
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