「梅雨が明けたのにセミの大合唱が聞こえてこない」。そんな声が西日本新聞「あなたの特命取材班」に寄せられた。30日は九州北部でも14地点で最高気温35度以上の猛暑日になるなど、既に夏本番。にもかかわらず、確かに真夏の風物詩の存在感は薄い。調べてみると、観測史上最速の梅雨明けが影響しているようだ。
今年最高の34・8度を記録した福岡市・天神。日中の公園を歩いても、「シャアシャア」「ワシワシ」の大合唱は聞こえない。30日の各地の最高気温は、熊本県あさぎり町36・8度▽大分県日田市36・6度▽福岡県久留米市36・4度―など。福岡、長崎、大分、熊本4県に「熱中症警戒アラート」も出された。
厳しい暑さが続くが、なぜセミはおとなしいのか―。セミに詳しい九州大農学研究院の紙谷聡志准教授(昆虫学)によると、今季の初鳴きはニイニイゼミが6月21日、クマゼミが同26日だが、鳴き声はまだ散発的。例年7月中旬に鳴き始めるアブラゼミは未確認という。
紙谷准教授は「短い梅雨と少雨が影響している」と指摘する。土の中で育つセミの羽化には気温の上昇だけでなく、まとまった雨が不可欠。九州北部の梅雨明けの平年値は7月19日で、セミの活動が活発になるのも例年その時季だ。
ところが、今年は6月28日に異例の梅雨明け。期間も17日間と最も短く、雨量は各地で平年を下回り、半分以下の所も。紙谷准教授は「雨が少なく、タイミングを計りかねているのでは。今は『いつになったら降るのか』と待ちわびているのだろう」と見守る。
九州北部は来週ごろから、まとまった雨が降る予報。その後に一斉にセミの合唱が響き渡るかもしれない。体感温度が上がるようで、それはそれで考え物…と思うのは人間の勝手だろうか。(梅沢平)
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