宮城県教委は、県立高の全生徒約3万6000人が学校でタブレットかノートパソコンを1人1台使える環境整備を目指している。端末は各家庭が購入し、学校に持ち込む形で導入を進める方針だが、補助制度はない。周辺機器を含めると1台7万円程度の出費は痛い。一方で、県教委は既に3人に1人に当たる端末を調達し、希望する生徒に無料で貸し出す。買うか、借りるかは自由。教育団体からは「誰もがお金の心配なく平等な教育を受けられるよう公費で負担するべきだ」との声も出ている。
教育団体「公費で負担を」 貸与、差別生む恐れ
端末を家庭が買い、学校に持ち込む原則について、県教委は昨年6月の地区校長会で「生徒が自由に持ち運ぶことで、学校だけでなく、家庭での予習復習や課題探究など幅広い活用が期待される」と説明。各校の特色や生徒に合った方法で運用できることも利点に挙げた。
半面、県教委は貸し出し用の端末として2019~20年度、約1万3000台を確保。本年度内に約2500台を追加配備する。事業費は国の臨時交付金などを充て、総額8億円を超える。さらに増やすかどうかは未定という。
家庭の経済状況など貸し出す際の条件はなく、購入という原則が崩れる懸念もある。県教委高校教育課は「貸し出し用の端末を低所得者向けにすると、いじめにつながる可能性がある」と理解を求める。
1人1台の実現に向けた生徒所有端末の持ち込みは本年度、宮城一高(仙台市青葉区)と仙台三高(宮城野区)の各1年生を対象に始まった。
仙台三高では、同校指定のパソコンを使った授業が昨年9月にスタート、数学や物理を中心に利用されている。理数科の女子生徒(16)は「資料をクラスメートと共有したり、実験データを表計算ソフトに入力して考察したりする。家に持ち帰れるし、通信環境さえあれば帰宅途中でも勉強できる」と話す。
家庭による購入費の全額負担を巡り、井上健一教頭は「ICT(情報通信技術)機器の活用能力は、大学に進学してからも求められる。『将来は文房具のようなものになる』と説明し、保護者の理解を得た」と振り返る。
秋田県の県立学校は20年度、1人1台の端末を公費で一気にそろえた。整備開始までは「普及率は全国最下位レベル」(秋田県教委)だったが、新型コロナウイルスの流行でオンライン教育の比重が高まるなど現場に変化が生じ、約2万台を買い入れた。普通教室には電子黒板も完備した。
東京都では、生徒所有の端末を持ち込む形で整備を進める。22年度の都立学校入学者からは、家庭の収入に関係なく一律3万円で都教委が推奨する端末を購入できる予定という。
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