小学館『セクシー田中さん』調査報告書を公表 再発防止誓う コミュニケーションの問題も指摘「脚本家に要望が伝わっていなかった可能性高い」
小学館は6月3日、日本テレビで2023年10月クールに同名ドラマ化された漫画『セクシー田中さん』の原作者である漫画家・芦原妃名子さんが急逝した事案について、特別調査委員会による「調査報告書」を公表した。
公表された調査報告書は86ページにわたる。調査は関係部署・関係社員から提出されたメールやLINEなどの資料の分析およびヒアリングに基づいて行われ、日本テレビ関係者や日本テレビが委託した脚本家には文書によりヒアリングが行われた。
報告書では冒頭で、〈漫画家の芦原妃名子先生がご逝去されたことについて、改めて、先生の多大な功績に敬意と感謝の意を表するとともに、謹んで御冥福をお祈り申し上げます。また、ご遺族の方々にも深く哀悼の意を評します〉としたうえで、〈この調査報告書は、芦原先生の作品『セクシー田中さん』が映像化された後に先生が亡くなられたことを真摯に受け止め、ドラマ制作過程やSNS投稿に関わる事柄を調査、検証したものです。調査、検証にあたっては、作家の皆様よりお預かりした作品を映像化する際に、作家の皆様により安心して臨んでいただき、執筆・作画に集中していただけるようにするために弊社は何をすべきか、という観点から、事実を把握し改善策を提示することを目的としました〉と記している。
報告書では、ドラマ化決定までの経緯や、脚本をめぐる日本テレビとの交渉の経過、芦原さんが繰り返し脚本の修正を求めていた経緯の詳細、脚本家の降板やその後のSNS投稿の対応などについて事実経過をたどったうえで、考察と再発防止策の提言をしている。
脚本をめぐって焦点のひとつとなっていたのが、原作になくドラマオリジナルの展開が描かれることになっていた8~10話についてである。
特別調査委員会としては2023年6月10日にメール及び口頭での契約が成立したと認定されている。同日のメールでは小学館社員から日本テレビ社員へ、〈その先のドラマオリジナル展開に関しては、芦原先生の方から、脚本もしくは詳細プロットの体裁でご提案させていただけませんでしょうか〉と提示し、日本テレビ社員から〈9話あたりからのドラマオリジナル展開に関して芦原先生の方から、脚本もしくは詳細プロットの体裁でご提案して頂く点も承知しました〉と回答があったとされている。
一方、脚本家は調査委員会のヒアリングに対し〈(ドラマオリジナル部分の)脚本を芦原氏が書くという条件であれば脚本を引き受けなかった〉と回答している。このことから、報告書では〈芦原氏が脚本を書く場合があるとの条件は重要な要素であったので、明確にしておく必要があったと言えるかもしれない〉とも指摘している。
また、報告書では、原作サイドの要望が脚本家側に伝わっていなかった可能性が高いとして、コミュニケーションの問題も指摘された。
〈本事案では芦原氏が何度も同じ指摘をしないと原作に沿った脚本の修正がなかったことと、日本テレビ側が芦原氏の修正意見について反論して、従前の脚本を維持しようとしたことがあり、芦原氏や(小学館)社員Aに大きな負担を強いた。この度、本件脚本家の回答によれば、その大きな原因として、日本テレビ社員Y氏が、芦原氏の意向をふまえて社員Aがアレンジやエピソードの入れ替えなどをしないように何度も強く求めたことを本件脚本家に伝えていなかったり、監督など制作陣の意見を反映したりした可能性がある〉
さらにドラマオリジナル部分の8~10話についても、〈結局、芦原氏の詳細プロットの改変を極力避けてほしいとの小学館の希望が本件脚本家に伝わっていなかった可能性が高い〉と記されている。
特別調査委員会は「再発防止策の提言」として「テレビドラマ化対応」と「危機管理体制の充実」を挙げ、「契約書締結の早期化」や「契約の窓口の一本化」、担当者の「サポート体制」、さらには「SNSのリスクへの危機意識を涵養すること」「危機管理の専門窓口の設置」「作家や編集者を孤立させない」ことなどを掲げ、再発防止を誓った。
なお、小学館は同日、「当社刊行作品の映像化に関する、今後の指針について」と題する文書も発表した。その中では、「作家の皆様のご意思やご希望を確認し、そのご意向を第一に尊重した文書を作成し、映像制作者側と協議、交渉いたします」など3項目の指針を公表している。
https://www.news-postseven.com/archives/20240603_1968361.html?DETAIL
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