2023年5月1日、スマートフォン決済の「PayPay」を提供するPayPay社からサービスに関するいくつかの変更が発表された。Twitterでは「PayPay改悪」がトレンド入りするなど、ユーザーに衝撃を与えたようだ。
その1つがクレジットカードの新規登録、および利用を停止するというもの。PayPayは事前にチャージした残高で支払う方法だけでなく、登録したクレジットカードを使って支払うこともできるのだが、同社の発表によると2023年7月初旬にクレジットカードの新規登録を停止し、さらに2023年8月1日にはクレジットカードの登録自体を解除するという。<中略>
苦戦が続く親会社、成長をPayPayに託す状況に
だが市場環境を見るに、一連の措置はPayPay自体ではなく、その親会社であるソフトバンクとZホールディングスを取り巻く状況が大きく影響したのではないかと筆者は見ている。PayPay社はZホールディングスと、その親会社の1つであるソフトバンクが共に34.9%の株式を保有しており双方の連結子会社となっている。しかし、親会社の2社を取り巻く状況は現状、決して良好とは言えない。
まずZホールディングスに関してだが、メッセンジャーアプリ「LINE」を提供するLINE社と経営統合して現在のZホールディングスが誕生したものの、対等な立場での経営統合ということもあってか重複事業の調整が進んでいない。また、主力の広告やEコマース事業が伸び悩むなど、低迷が続いている。
そこで、状況を改善するべく2人体制だったCEOを1人に絞り、なおかつZホールディングスと中核子会社のヤフー、LINE社を2023年10月1日に合併し、社名を「LINEヤフー」とするなど大きな事業再編を実施している。ゆえに、当面は事業再編に力を注ぐ必要があり、短期的に大きく伸びる事業を生み出すのは難しいだろう。
一方のソフトバンクも、菅義偉前首相の政権下で起きた携帯電話料金引き下げ要請により、業績は2021年度から急激に悪化している。現時点で業績は回復傾向にあるものの、携帯電話料金に対する政府の厳しい目は現在も続いていることから、主力の事業で成長が見込めなくなっている。
そこで両社が、今後の成長をけん引する存在として強い期待を抱いているのがPayPayなのである。PayPayは事業拡大に向けた投資が続いているため業績はまだ赤字だが、既に国内で高いシェアを獲得し利用も拡大していることから、収益化へと舵を切れば利益が見込めるのだ。
しかも、黒字を達成すれば株式市場への上場という道筋も見えてくる。実際ソフトバンクの代表取締役社長執行役員兼CEOである宮川潤一氏は、決算会見などで以前より「PayPayの上場を目指している」と発言しており、PayPay社の黒字化と上場が、親会社の成長を担うドライバーして期待されていることは間違いないだろう。
それだけに今回の措置は、親会社が期待する黒字化と上場に向けて、PayPayが事業拡大から収益重視へと大きく舵を切りつつある様子が見て取れる。ただ、今回のような措置が増えれば、ユーザーの不満が高まり、事業の停滞やその後の成長に影を落とす可能性も出ててくる。収益化とユーザーメリットとのバランスをいかに取るかが、今後のPayPayには求められることとなりそうだ。
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https://japan.cnet.com/article/35203356/
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