1:名無しさん




東京・渋谷駅のほど近く、六本木通り沿いを歩くと、まるで時空を越えたかのような建築物が突如として現れます。その名は〈旧三基商事東京本部第1ビル〉。窓がほとんどなく、傾斜した壁面をびっしりと覆うタイル。重厚で異様な存在感を放つその外観は、まるで古代の遺跡のようにも見えます。

この建物を設計したのは建築家・永田祐三。豪華絢爛な装飾と圧倒的スケール感で知られる和歌山県の名建築〈ホテル川久〉も彼の代表作です。その永田が、竹中工務店に在籍していたおよそ40年前に手がけたのがこのビルでした。モチーフとしたのは、メキシコ・ユカタン半島にあるマヤ文明の遺跡〈ウシュマル〉。若き日の永田がアメリカ留学中に現地を訪れ、「建築の原型を見た」と感銘を受けたことがきっかけだったといいます。そこから着想を得て、日本の都市空間に、壮大な古代建築のエッセンスを持ち込んだのです。

当初は三基商事の本社オフィスとして機能していたこのビルも、2年前に企業が移転して以降は、使われることなく眠っていました。そんな中で再活用の可能性を見出したのが、アップサイクル家具ブランド〈家’s〉です。 〈家’s〉は、空き家に置き去りにされた家具、とりわけ箪笥などを回収し、鮮やかな蛍光アクリル板など現代的な素材と組み合わせることで、全く新しい命を吹き込む取り組みをしています。彼らが選んだ次なる活動拠点が、まさにこの“古代遺跡のような”旧三基商事ビルだったのです。

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