直近10年で4倍増加した日本の木材輸出。木材の輸出総額は今年も500億円を超える額で推移しており、うち3分の2が丸太と製材となっている。合板の多くが日本国内へ再輸出されているので、主流となっている丸太と製材がどこでどう流通し消費されているのかを整理したい。(続く pic.twitter.com/p3JxzAktm6
— Shunsuke Hori / 堀俊介 (@hori_shunsuke) November 22, 2024
製材の輸出先別数量の推移。丸太ほど伸びてないが、直近10年で4倍になった。こちらも中国が1番多く、アメリカ、フィリピン、韓国と続く。フィリピンが意外だが、日本のハウスメーカーのフィリピン工場向けで、現地で消費されることなくほぼ全量日本に戻ってきている。中身はスギ、ヒノキで95%。(続く pic.twitter.com/kj1G2CGpk9
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今度は丸太と製材を輸出額で見てみる。直近300億円前後で推移しており、2023年の輸出先としては中国が73%を占め、アメリカ、韓国、台湾と続いている。では、中国へ輸出されたものはどう消費されているのか?(続く pic.twitter.com/tfqZYfvGUY
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輸出木材の大半を占めるスギ、ヒノキの最終消費地を2021年時点の数字を元に分析したグラフ。7割が中国へ輸出されているスギ、ヒノキだが、最終的にはスギの7割がアメリカで、ヒノキの7割が韓国で消費されている。ホタテのように中国へ原材料が輸出、加工され別の場所で多くが消費されているのだ。 pic.twitter.com/8Bj1r19TFk
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では具体的に現地でどうなってるのか。まずは丸太の流通を見てみよう。日本の港湾(80%が九州)に集められた丸太の多くはバラ積み船(不定期船)に積み込まれ、燻蒸されて中国へ送られる。韓国や台湾へはコンテナに詰め込まれ定期船で送られることが多い。(続く pic.twitter.com/auoXWOoCxY
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バラ積み船には2,500-5,000m3くらい積んで出荷されることが多い。中国の強みは細い丸太も太い丸太も関係なく、ごちゃまぜにして買うこと。丸太を各国から大量に輸入しているので、港湾に選別、問屋機能があり、出荷する方は細かく分けなくてよいのだ。(続く pic.twitter.com/acDrSHK79b
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「中国にいくと丸太の材積が増える」日本も中国も丸太は材積(m3)で取引をしている。だが、日本の材積計算方法と中国のそれは異なり、ざっくり言うと日本のJAS規格で計算した貨物を中国の規格で計算し直すと材積が10%くらい増える。なので、中国では輸入後一万本以上ある丸太を一本一本測り直す。(続く pic.twitter.com/VkwX07aYxs
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「中国では港に原木市場がある」中国材積に測り直された丸太は径級ごとに分けて売られていく。8-12cmは建築現場の杭、14-20cmはパレット、20cm-30cmはアメリカ向け加工、40cm上は家具用など用途別に問屋で選別され、丸太に電話番号が書かれているのがわかる。製材所は直接丸太を見て電話して買っていく pic.twitter.com/LFXoLyszTt
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「上海付近で8割が荷揚げ」日本から中国に出荷された丸太の向け先は主に三ヶ所。上海近郊の太倉港、山東省の嵐山港、福建省の莆田。上海近郊が8割、山東省と福建省で1割ずつ。だいたいどこの港でもガントリークレーンで荷揚げしている。ガントリークレーンから直接トラックに降ろすのは豪快すぎる。 pic.twitter.com/XOcN8ipLK6
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「中国に輸出されているスギ丸太の4割がアメリカ向けの原料」23年の実績で115万m3のスギ丸太が中国へ輸出されていたが、ざっくりその4割くらいがアメリカ向け製材品の原材料となっている。アメリカ向け製品の8割以上がエクステリア材で、フェンス用の薄板をフレームソー(オサノコ)で製材している。 pic.twitter.com/EmHBEy6WCD
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「中国の木材需要はピークを過ぎ、丸太輸入量は急減している」右肩上がりの日本から中国への丸太輸出量だが、中国の木材需要は2019年がピーク、かつ丸太輸入量も2021年6300万m3から2023年の3800万m3へと4割減少した。ロシアの事情もあるが、需要減少と製材品輸入への転換が徐々に起きつつある(続く pic.twitter.com/4KMT9GvpsV
— Shunsuke Hori / 堀俊介 (@hori_shunsuke) November 23, 2024
「1$=140円より円安ならスギ丸太は安い」中国へ輸出されている日本の丸太・製材は4割がアメリカ、1割が韓国、1割が日本や他国へ再輸出され、残り4割が中国国内での消費。丸太では圧倒的な輸入量のNZの丸太が指標となるが、1$=140円より円安であれば、スギは中国国内で価格競争力を持つ(私の感覚)
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「中国の木材需要は輸出関連原材料が3割」こちらは中国国内の用途別木材消費割合。家具は6,7割が輸出、梱包・パレットも輸出の際に使われるものが多く、3割が輸出に紐付き内需は7割。小径木は工事現場、価格が安ければ内装下地材になり内需は建設投資に紐付いている(続く pic.twitter.com/rDjfqzzouq
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「中国以外に丸太の行き先はない」丸太を大量に輸入し製材するには、港湾、輸送に大規模な設備投資が必要。そのため丸太の大規模輸入国は、中国、インド、韓国くらい。インドは遠くコスト競争力がないため、今のスギ丸太の行き先として中国以外の国は存在しない(写真はインド、カンドラ港 pic.twitter.com/4WwZL9BhLh
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「今後の課題は国外のコスト、ニーズに合わせた設備投資」中国は国内針葉樹資源が枯渇しているので、少なくともあと10年は針葉樹丸太を輸入し続ける。日本の課題はその間に、国内向けでなく国外のコスト、ニーズに合わせて製材する体制を整えていかに製品を売っていくかだろう(完了)
— Shunsuke Hori / 堀俊介 (@hori_shunsuke) November 23, 2024
日本で加工してアメリカに輸出すると付加価値が上がり利益が増加するのに何でしないのかなあ…
— お散歩大好き (@vei7046hy) November 23, 2024
元々中国のスギを加工するところから始まったことが1番大きな理由です。日本で加工して輸出する量も確実に増えていますよー
— Shunsuke Hori / 堀俊介 (@hori_shunsuke) November 23, 2024
恐らく和歌山とかから原木が輸出されてる筈なので日本も最新の機械を導入し国内加工すべきだ。雇用だって増える。
— みぎー 🇺🇦💉🔞 (@miginco123) November 23, 2024
24年1-9月の税関別丸太輸出実績となります。九州が8割強で、和歌山はそれほど多くないですね。今後国内の需要が激減するので、従来同様の加工をしても供給過多になります(なので、私は国外での需要をつくっていく仕事をしております) pic.twitter.com/xsDpwJ0BHd
— Shunsuke Hori / 堀俊介 (@hori_shunsuke) November 23, 2024
なるほど。トランプが中国に高関税をかけたら、こういう日本の木材輸出も大打撃になるわけだ。
— karasemi 8091 (@Karasemi8091) November 23, 2024
むしろ日本から直接製材で輸出される量が増えるので、プラスになりますね!
— Shunsuke Hori / 堀俊介 (@hori_shunsuke) November 23, 2024
なるほど! 某1J工務店のフィリピン工場はそういう事なのね。
— white crow (@h1xTba7knjJloPj) November 23, 2024
数年前に事故を起こした時になんでフィリピン?と思ってました。
はい、ご指摘の通りです。製材でも一定量フィリピン向けの輸出があるのですが、ほぼ全量IJさんです。
— Shunsuke Hori / 堀俊介 (@hori_shunsuke) November 23, 2024
原木の産地も気になります
— むらたn (@stJY0Z09fOHMqiP) November 23, 2024
2024年1-9月の原木輸出元はこんな感じです。8割以上が九州ですね。 pic.twitter.com/t1sgLu3nO4
— Shunsuke Hori / 堀俊介 (@hori_shunsuke) November 23, 2024
亡き父が北海道林務部の職員だったのでとても興味深く読みました。日本の木材輸出は増えているんですね。
— 渡邊良夫@地質技術者 engineering geologist (@geolgengineer) November 23, 2024
お父様が道の林業職をされていたのですね。北米広葉樹の高騰で、道産広葉樹も国外から目をつけられており北海道からの輸出量も増えております。それでも旭川勢が頑張ってますね。
— Shunsuke Hori / 堀俊介 (@hori_shunsuke) November 23, 2024