鹿児島県十島村口之島沖で韓国籍ケミカルタンカー「キョヨン・パイオニア」(2577トン)が座礁した事故で、第10管区海上保安本部は16日、船舶所有者が手配したサルベージ会社から「船体が折れた」と報告があったと発表した。中央部付近から二つに折れたとみられ、10管は巡視船とヘリコプターを派遣し、積み荷の化学物質シクロヘキサン流出の有無などを確認している。
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シクロヘキサンの除去や、船体を撤去するめどは立っていない。10管によると、タンカーは船橋上部と船首のみが海面上に出ている。サルベージ会社からの連絡は同日午前7時40分ごろあった。強風注意報と波浪注意報が出ていた。
タンカーは4月16日に座礁、シクロヘキサンは約2886トンが積まれていた。タンカー周辺の空気中で検出されているが、口之島沿岸では5月16日午前9時時点で確認されていない。
シクロヘキサンは無色透明の液体で揮発性が高い。鼻やのどを刺激し、頭痛やめまいを引き起こす。周辺の船舶には現場に近づかないよう呼びかけている。燃料の重油の抜き取り作業は終えている。
◇専門家「揮発性高く海への影響ないだろう」
鹿児島県十島村口之島沖で座礁していた韓国籍ケミカルタンカーが中央部から折れたとみられることを受け、住民らには16日、積まれたままの化学物質「シクロヘキサン」(2886トン)の流出や撤去作業の長期化への懸念が広がった。シクロヘキサンは近づかない限り人体への害は少ないとされるが、周辺は漁の人気スポットで、早期の撤去を願う声が上がっている。
タンカーは約1カ月、座礁したまま。住民によると、座礁場所の海は浅く、大型船は近づけない。
口之島で民宿を営む元漁師の肥後栄男さん(75)は「島一番の漁場が荒らされ今後の影響が心配だ」。役場の担当者は「島に近く不安はある。できるだけ早く、安全に船と化学物質を運び出してほしい」と訴える。
鹿児島大学水産学部の宇野誠一教授(55)=環境保全学=によると、シクロヘキサンは油のように水に溶けにくく、揮発性が高いため漏れても多くが蒸発する。「海への影響はほとんどないだろう」と話す。国立環境研究所(茨城県)は高濃度を吸引すると健康への影響があるとし、「近づかないようにしてほしい」と呼びかけている。
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