<豊富な淡水を必要とする従来の技術とは異なり、水がない砂漠でも水素の生成が可能になる>
研究者たちが、電気と大気中の水分だけを使って水素を生成する方法を発見した。
これまで水素の生成には液体の水を使用していたが、9月6日発行の英オンライン学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表された論文によれば、新たな「グリーン水素」は大気中の水分を電気分解することで生成する。この方法を使えば辺境地帯や乾燥地帯にも水素燃料を提供することができる可能性がある。論文を執筆した研究者たちは、大気中の湿度がわずか4%の環境下でも、電気分解装置を作動させることができた。
豪メルボルン大学・化学工学科の上級講師であるギャング・ケビン・リーは本誌に、「我々はいわゆる『直接大気電解装置』、略してDAEを開発した」と語り、次のように説明した。
「この装置は、常に大気にさらされた状態の、吸湿性のある電解質を使っている。この電解質が大気から水を自然に抽出し、ここに再生可能エネルギーによる電力を供給することで、環境に負荷をかけずに電気分解や水素生成ができる」
淡水が手に入らない砂漠でも
電気分解は従来、水の中に2つの電極を入れ、そこに電流を流すことによって、液体の水から水素と酸素を収集してきた。正電荷の電極である陽極で電子がH2O(水)から引き離され、水素イオンとO2(酸素)の分子になる。陰極では、水素イオンに電子が供給されて、H2ガス、即ち水素が生成される。
だがこの方法は液体の水を必要とするため、水が豊富にある地域でしか用いることができない。限られた飲料水を奪うことにもなりかねない。DAEならば大気中にある水を収集するため、どこでも水素を生成できるようになる。
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