「賃金上がりすぎ」で負のスパイラルに陥り始めたドイツ。
給与ベースアップを求める「春闘」をめぐり先週、大手企業を中心に高い賃上げ水準の回答が相次いだ。賃金水準の低さが指摘される日本では、「賃上げ」を進めるべきだという意見が優勢だ。
一方、名目GDP(国内総生産)で日本を抜いて世界3位になったドイツでは、逆に「賃上げをストップしなければ経済が危うい」という状況になり始めていることをご存知だろうか。
ドイツではいま、高インフレを受けて労働組合による賃上げストライキが多発し、それが社会問題となっている。特にドイツ鉄道(DB)の労働組合「GDL(運転士労組)」のストは激しく、現地時間の3月11日午後6時より貨物部門、翌12日午前2時より旅客部門での24時間ストが実施された。13日朝には平常化したようだが、このストは、現在の労使交渉で6回目となる。
物価が上昇した場合、それに見合うだけ賃金が増加しないと、家計の消費は圧迫される。したがって、労働者は使用者に対して、団体交渉を通じて賃上げを要求する。しかし賃金が増加すれば、それがまた物価の上昇をもたらすことになるため、実質的な賃金は増えないどころか、減ってしまう。そのため、労働者はさらなる賃上げを要求する。しかしその賃上げが、物価の一層の上昇をもたらす。
こうした流れは「賃金・物価スパイラル」と呼ばれるもので、今のドイツは展開的なこのスパイラルに陥ったと言える。このスパイラルを止めて物価を安定させるには、政策的に賃金の増加に歯止めをかけなければならない。とはいえ、物価高が先行することになるため、「歯止め」によって労働者側が一時的に強い痛みを負うことになる。
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