自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件で、パーティー券収入のノルマ超過分を派閥の政治資金収支報告書に記載しなかったとして、政治資金規正法違反(不記載、虚偽記載)容疑で刑事告発された最大派閥の清和政策研究会(安倍派)の歴代事務総長ら幹部議員について、東京地検特捜部が立件を断念する方向で調整していることが関係者への取材で判明した。会計責任者との共謀の立証が困難との見方を強めている模様だ。
一方、安倍派と志帥会(二階派)の会計責任者については、同法違反で在宅起訴する方向で詰めの捜査をしているとみられ、来週にも告発された議員らと併せて刑事処分を判断する。
安倍派では、派閥から議員側にキックバック(還流)されたノルマ超過分が双方の収支報告書に記載されず、さらにノルマ超過分を派閥に報告しないで事務所でプールしていた議員がいたとされる。また、二階派では、パーティー券収入の一部が収支報告書に記載されていなかったほか、事務所でプールしていた議員が複数いたとされる。
公訴時効にかからない2018年からの5年間で、安倍派では裏金化の総額が6億円近く、二階派の不記載額は2億円超に上る可能性がある。両派の会計責任者は特捜部に不記載への関与を認めているという。
会計責任者との共謀が認められれば政治家も立件対象となる。特捜部は18年以降に安倍派で派閥の事務を取り仕切る事務総長を務めた、下村博文元文部科学相▽松野博一前官房長官▽西村康稔前経済産業相▽高木毅前党国対委員長――の4氏らへの事情聴取を進めてきた。
関係者によると、4氏は、還流が事務局から派閥会長に直接報告される「会長案件だった」などと説明し、いずれも会計責任者との共謀を否定したとされる。当時の会長は細田博之前衆院議長と安倍晋三元首相だったが、両氏は死去しており、安倍氏が亡くなった22年7月以降の対応が焦点となっている。
安倍氏は生前の同年春に還流中止を提案し、いったんは中止が決まった。しかし、継続を求める議員から反発があり、安倍氏の死去後に当時の事務総長だった西村氏や、下村氏、世耕弘成前党参院幹事長ら派閥幹部と会計責任者が対応を複数回協議。同8月に還流継続が決まったとされる。
ただ、この協議について、出席者の多くが不記載の積極的な指示や、会計責任者からの具体的な報告を否定している模様だ。【井口慎太郎、北村秀徳、岩本桜、山田豊】
https://mainichi.jp/articles/20240113/k00/00m/040/061000c