1:名無しさん




中国の一般的な住宅には、日本の住まいに見られるような「玄関スペース」は存在しません。多くの住宅では、ドアを開けると直ちにリビング空間が広がる間取りが採用されており、玄関に相当する段差や専用スペースは設けられていません。これは、かつて家庭内で靴を脱ぐ習慣がなかったことに起因しています。

1990年代初頭までは、都市部の集合住宅であっても、室内の床はコンクリート仕上げが主流であり、居住者は基本的に靴を履いたまま生活を送っていました。ベッドに上がる際のみ靴を脱ぐというスタイルが一般的であったため、玄関の必要性が乏しかったのです。

近年では、フローリングや大理石等の床材が広く普及し、自宅内では靴を脱ぎスリッパ等に履き替えるスタイルが浸透しつつあります。ただし、それでも専用の玄関スペースは多くの住宅で設けられていないため、日本人居住者にとっては「靴を脱ぐタイミングや場所」に戸惑うケースも少なくありません。一般的には、靴は「室内に入ってすぐの場所で脱ぐ」のが通例ですが、訪問先の家庭によってルールが異なるため、訪問時には家人へ確認を取ることが推奨されます。

また、間取りの面では、日本でよく見られる「リビングダイニングキッチン(LDK)」形式の住宅は中国では一般的ではありません。その主な理由は、中華料理の調理に多くの油を使用するため、調理スペースと生活空間を分ける必要があるからです。かつて欧米風のLDKスタイルを模した住宅も登場しましたが、短期間でリビングの壁面や家具に油汚れが広がるなどの問題が顕在化し、定着には至りませんでした。

さらに、水回りの構造に関しても、日本と中国では大きな違いがあります。中国の住宅では、トイレ・洗面・シャワーが一体となったユニット式の空間が主流です。これは水回り設備をコンパクトにまとめた欧米スタイルに由来するものですが、浴槽の設置は一般的ではなく、シャワーのみという住宅が多数を占めています。この傾向は、節水効果や衛生面での配慮、さらには中国南部に見られる高温多湿の気候特性に基づく、合理的な生活様式の結果といえるでしょう。

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