1:名無しさん


 

 

バブルの頃の製造業は二言目には「自動化・機械化・無人化」って言ってて何処の工場も自動化率を上げるのに躍起になってた。

その頂点に君臨してたのが日産の座間工場、自動化率は脅威の99%。

自動車の工場なのに工員がおらず、白衣とスーツ着た奴が隅っこの方でウロウロしてるだけという未来感溢れる工場で、当時の海外からのVIPが来たら見学コースの定番だった。

で、バブル崩壊以降日産がどうなったのかは皆さんご存知の通り。
座間工場なんてウルトラ金かけたのに一目散に閉鎖。

まぁつまり、現在モリモリ稼働してる中国の自動化率自慢の工場は今後日産座間工場みたいになるって事です。

 

 

何か、「どうして自動化率高い工場が潰れたのか理由を書け」ってレスが多いので。

まぁ、既に幾つかレスで書かれてる「維持費が高い」「少ロット多品種に対応しにくい」ってのもあるんですが、私は完全自動ラインの一番の短所は「稼働率が低い」事だと思ってます(生産管理やってた訳じゃないから断言出来ませんが)

要は、割と止まるんですよ自動化ライン。

無論、人がやってるラインでもトラブルは起きますしその度にラインは止まります。
しかし、人がやってるラインの場合は復旧が早いんですよ、腐る程人手があるので。

私が車のラインに入ってた時、度々ラインが止まってましてその度に復旧要員がトラブル箇所に押し寄せて大騒ぎしてました。
特に印象に残ってるトラブルを幾つか。

ラインとラインの接続部の所で車のボディのドンガラを載せ替える場所があったんですが、ある日その載せ替え時にボディが落っこちましてw
まだエンジンや足回り等付いてない軽い状態だったんで人力で持ち上げてラインに載せてましたw
30人くらいで寄ってたかってwww

もうひとつは、そこで作ってる車はショートボディとロングボディの二種類混載してるラインだったんですが、ある日無人化されてた溶接組立ラインで屋根部の供給にズレが生じまして、ロングボディにショートの屋根が、ショートにロングの屋根が溶接されて組まれるトラブルが起きたのです。

で、溶接組立ラインは無人だったんで誰も気が付かず、その後の仕上げの工程の人が気が付いてそらもう大騒ぎw
その日は丸一日ライン止まって復旧してたそうで…

人手の多いラインだと、誰かが具合悪くしたり怪我したりしてダウンしても、他の人を入れれば済む話です。
実際、予備要員としてある程度の余剰人員が配置されてます。
しかし、自動化ラインだと機械がイカれたから代わりの機械を、って訳には行きません。

まぁ本当に代わりの機械を用意してるラインもあるにはあるんですよ。
例えば半導体の前工程。
半導体は同じ機械を何台も導入して並行して作業させてます。
なので、何処かの機械がダウンしたら同じ工程の他の機械に製品が回されるので全体の能力はちと下がりますが全てのラインが止まる事はありません。
ところが、車のラインの様に同じ機械を数台入れられない様な生産数に対して設備にカネ掛けられないラインだと大抵の場合は一直線のラインで、何処かでトラブル起こりと上流から下流まで全部止まります。

で、これらのトラブルは割と繁茂に起きるんです。

私が居たその工場では、5分以内に復旧するトラブルは日に数回、30分以内のは週数回、それ以上は月に数回、という感じで起きてました。
まぁ、その工場は増設に増設を重ねたつぎはぎだらけのフランケンシュタインみたいな工場だった、って事もあるんですけどw

それでも翌日には復旧出来てたのは、それこそ人手があるからこそなんですよね。
完全無人化達成してる工場ででっかいトラブル起きて、例えば機械の中でつんのめってる車のボディを出さなきゃとなったらすぐに集められる人手なんてありません。
普段モニター見ながらキーボード叩いてる人達に「ボディ持ち上げて機械から出すよ」なんて言ったら泣いちゃいます。

こういった稼働率対策の為にラインを廃して製品を動かさずに1ヶ所で全部組み立てる方法にしてる場所もあります。
それならトラブル起きても全ての組立箇所が機能停止する事がありませんので。

「機械に仕事させれば24時間365日フル稼働させられる」なんて思ってる人は多いのですが、実際にはショボいトラブルが慢性的に起きててチョコチョコ止まるしたまにドカンとヤバい事故が起きて何時間も止まったりするのが自動化ラインです。
で、それらの自動化ラインは自分でトラブルから復旧する事が出来ないんです。

ソフト周りのトラブルなら担当エンジニアがデータいじって直すんですが、物理的なトラブルの場合はどうしても人手がいる。
ところが、自動化を進めれば進めるほどその人手は少なくなるのでデカいトラブルに対応出来なくなる。
しかも自動化を進めるとそういったトラブルが発生する機会も増える事になる。

産業設備に触れる機会のない一般の方は工場で動いてる機械も家電みたいに故障は少ないし車みたいに定期的に点検されてると思ってるのでしょうが、実際には常に壊れてる状態で騙し騙し稼働してる設備なんてザラにあるし点検なんて外から見える場所位で開けて中見るとか数十年に1回やるかやらないか、です。
大抵は「壊れて動かなくなるまで動かして動かなくなってから直す」ってのが実情です。
何せライン止められないので。