1:名無しさん




 「ワーク・ライフ・バランス(WLB)という言葉を捨てる」。10月に高市早苗首相が自民党総裁に選ばれた際にそう語って、批判を呼んだ。法政大教授の上西充子さんは、「働く」ことを巡って政治家や資本家らが語り出す時、その言葉に宿る思惑には注意が必要だ、と言う。話を聞いた。(聞き手・平賀拓史)

 ――自民党総裁選で新総裁に選ばれた直後、議員たちに向けて決意を述べた場での発言でした。その後、発言には過労死の遺族らをはじめとして、批判が集まりました

 以前ならこのような気負いこんだ発言を擁護する声も多かったかもしれませんが、今回の発言に対し、歓迎する反応は少なかった。高市氏も翌日には記者団に「WLBを大事にしてください」と述べるなど、弁明するような姿勢を見せました。「WLBを捨てる」は当然批判されるべき発言でしたが、時代が確実に変わっていることを図らずも映し出しました。

――権力を持つ側の人物が発言することの影響力は大きいですね

 WLBとは、使用者側に対して適正な働かせ方を促すための言葉ですよね。もともとは長時間労働が常態化している構造を、使用者に是正させる文脈で広げられたものです。しかし、標準的な働かせ方は変えないままに、個々人の事情や考え方によってWLBを重視したいならどうぞ、仕事に集中したいならそれもどうぞ、と「多様な働き方」のひとつであるかのように言葉の文脈がすり替えられてきています。警戒が必要です。

https://www.asahi.com/articles/ASTCX1JLCTCXUCVL02VM.html