1:名無しさん


 



江戸時代の日本には、すでに現代の「アイドル文化」の萌芽ともいえる現象が存在していました。当時、浮世絵がメディアとして広く浸透し、その中でも人気を博したのが芸者や歌舞伎役者(特に女形)を描いた美人画です。これらの浮世絵は、現代で言えばブロマイドやフォトカードに近い存在で、人々はお気に入りの人物の絵を集め、愛でていました。

特に注目されたのが、1760年代に登場した「笠森お仙」という町娘の存在です。彼女は東京・笠森神社の茶屋で働く一般女性でしたが、美貌が評判を呼び、浮世絵にたびたび描かれるようになります。芸者のように高額を支払わなければ会えない存在ではなく、茶屋に行けば実際に姿を見ることができる——つまり、現代でいう「会いに行けるアイドル」の原型といえる存在でした。江戸の男性たちは、浮世絵というメディアを通じてお仙に惹かれ、直接会える場所である茶屋に足を運ぶようになりました。

さらに時代が進んだ明治期には、「娘義太夫(むすめぎだゆう)」という若い女性たちによる義太夫節の語りがブームを呼びます。その人気は非常に高く、演目中に観客が「どうするどうする!」と掛け声をかけたり、終演後に彼女たちを人力車で追いかけたりするファンも現れました。この「おっかけ」行動は、現代のアイドルファンの行動と驚くほどよく似ています。

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